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リスタートが早いと復興も早くなる

國井:一番の産業は何ですか。

須田:原子力発電所の立地町でもありますが、そもそもうちは水産の町で、漁業と水産加工が盛ん。宮城県漁業協同組合の生産額の4分の1が女川だったこともあります。

國井:すごい量ですね。

須田:天然の良港として栄えてきた歴史があり、同時に地域で加工をやっていて、震災前は町外から1000人以上が働きに来ていました。傾向として感じるのは、震災による傷の深さにかかわらず、震災後のリスタートが早かったところのほうが伸びている。周辺の環境変化や国のサポートが最大限出るまで待っていた人ほど、立ち直りは厳しい。待っている間に販路を失い、人も離れていますね。当時はどこも一時解雇せざるを得ない状況でしたが、リスタートが早かったところほど今は安定していて、新しいことを始めて収益を出したりしています。

國井:私も緊急援助を開始するときは、資金が集まるのを待ってから始めるんじゃなくて、まずはすぐに動き始める。できるところから始める。するとなぜかお金はついてくる、支援者もついてきて、その後の早い復旧・復興にもつながっていくんですね。ビジネスの場は特に、勢いや人と人とのつながりが大事で、リスタートが早いと復興も早くなるのでしょうね。

須田:民の力は本当に強いと実感しました。震災1カ月後の4月、町内のあらゆるセクターの約60人が集まって、女川復興連絡協議会が立ち上がりました。商工会会長や観光協会会長、市場の組合の理事長などが集まった場で、商工会長がこんな話をされたんです。「今日、復興連絡協議会を発足して、自分は会長を務めるが、自分を含めた還暦以上は全員顧問になって口を出さない。20年後に生きているか分からん我々が復興してもたかがしれているし責任も持てない。だから、20年後も生きている若い人たちがやりなさい。君たちが企画やイベントで資金が必要なら、我々は金策もする。世の中から何か言われれば、我々がちゃんと弾よけにもなってやる。だからお前らがやれ」と。

國井:はー、すごい。

須田:小さい町ですが、そうだからこそ、経済界の中心になるような人が全員いる場で、そのメッセージが共有されたわけですよ。

國井:なるほど、そうなんですか。

須田:この協議会が、例えば仮設の商店街や店舗をやるにしても、先導的にいろいろなサポートをしながら、さらに行政が脇からサポートする形で、最初の1年半から2年は進みました。と同時に、協議会自身も復興プランを町や議会にも提示された。公と民がこうしていこうという考え方を共有し、各セクターはどんな役割を担うのかを話しながら進むことができました。

國井:須田さんはさらに若い世代に携わってもらおうとしている。

須田:新しいプレーヤーに参画してもらうことは、かなり重要だと思っています。もちろんそれは年配の方だっていいんです。というのは、同じ人がやると発想が限られてしまい、いろいろな人がいればいいプランや取り組みが出てくるから。我々の世代でやったものを資産として次に残すためには、今は真ん中の人が次の段階では違う役割を担いながら、真ん中でやっていることを次のプレーヤーにどんどんつないでいかないと変化がないし、止まってしまうかもしれません。

國井:まわりに学ぶべき市町村がありましたか?

須田:我々が考えていることを実際に動かしていたのが、岩手県の紫波町でした。バブル時代に買った10ヘクタールの塩漬けになった町有地を、民間資金で再開発をしていくオガールプロジェクトというのがあります。図書館などの公共動線を生む機能を含んだ複合施設をつくって、公共機能部分を町に売却するんですね。それで建物の建築費用の一部をまかないつつ、テナントについては入居店舗を先に決めて必要な分だけの床を作る、言い換えれば、無駄な床を作らないようにすることで投資分の見込み利回りを確定できるようにした。それで家賃収入と自主事業で稼ぎつつ、地代を町に払って納税もしてと、地域内でお金がぐるぐる回るサイクルをつくっているわけです。

 我々がやろうとしていることと近かったので、官民分け隔てなくみんなで5回学びに行きました。毎回、こんな事業計画は民間ならすぐにつぶれるよとか、手厳しいご指導をいただきながら、教えを請うて学びに行って。各セクターの人がみんなで共同体験したわけです。

國井:そう、私も時々依頼を受けて、大学で公民連携、官民パートナーシップのような講義をしますけど、これは理屈や論理じゃなくて、実践なんですよね。人材や予算などいろいろなものが絡み合いますから……。

須田:ほかには徳島の神山町などにも行きました。つまるところ、皆さんがおっしゃることには共通していることがあって、ひとつは面白いからやっている。もうひとつは、無理と言わない。何か始めようとしたら、うちは田舎だから、雪が降るからとか、ダメな理由をみんな並べてくるそう。でも、やってみなきゃ分からないじゃない、やったことのない人間がなぜ無理って言えるの?って。