心が震えた「原点」を大切に

葉田:医者としてもNPOとしてもどんどん成長しつつ、人の幸せに貢献できる様に、色々な人に国際問題を伝える様な事もやっていきたいと思います。
國井:ただ、同じ場所に行って同じ経験をしても、成長の仕方が人によって違う。経験を自分の中でどのように消化して自分の体力や知力にしていくかって結構重要だと思う。
例えば、へき地で働くことをマイナスと考える医者もいるけど、僕にとってはへき地医療から学んだことはアメリカの大学院以上の価値があったと思う。ただ、そこでの経験を自分の中で一般化したり抽象化したり、他の事例と比較したり別のオプションを考えたり、いろんな形で分析・解釈するなど消化して、自分の「知の引出し」に入れていく。そうすると途上国の現場などでも使える知恵になっていきますよ。
葉田:そういう視点で見ていきます。30代のうちにNGOで活動を広げていって、カンボジアも、1億円を超えるタンザニアの病院建設プロジェクトも達成して、母子の命を救う手伝いをして、たくさんの方に国際協力に興味をもってもらうのが今の夢。さらに次のステップに行けるように、レベルアップしたいと思います。
國井:いいね。個人やNGOとしてそこまでやるのはなかなか大変だけど、葉田さんならできるよ。夢は単純で大きいほうがいい。そしてパッションは熱くね。それが最終的にはドライバー、葉田さんが言った原動力になる。スキルや考え方、アプローチなんて途中から変わっていっていい。でも自分で目標を決めたらそれを見失わないでいってほしい。ドライバーが強ければそれに向かって進んでいく。軌道修正はいくらだってできる。
葉田:好きなことや心が震える瞬間というのは変わらないんですよね。
國井:僕はアフリカに行くと、今でも心が震えることが多いよ。全身が焼け付くような大地に立って、広い地平線に真っ赤な夕日が沈んで、バオバブやアカシアがシルエットに映る光景なんか見ると、大きく深呼吸しながら、帰ってきたなあって感じ。あとは緊急援助の現場。災害や緊急事態はないにこしたことはないけど、それが発生したら今でもその現場で働きたいと思う。緊急援助は自分が医者として働き始めた原点でもあるんでね。
葉田:原点って大切ですよね。僕はカンボジアの病院に行ったとき、お子さんをなくしたお母さんが次の子を妊娠していて、次はこのヘルスセンターで産みたいと言ってくれて。やっぱり自分はこういうことをやっていきたいと再確認したし、この笑顔を広めるためにはもっと自分自身が成長しなきゃいけないと強く思いました。
國井:ぜひ頑張ってください。葉田さんのような若い力が、次のジェネレーションを創っていくし、新たなエネルギーを生み出していくから。周りになんといわれても、自分を信じて。
葉田:はい、頑張ります。今日はすごく元気が出ました。ありがとうございます。

(構成=佐々木恵美)
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