
國井:でも国レベルで働く限界も感じてね。というのは、ユニセフで働いていた時のミャンマーもソマリアも、世界から取り残されて援助も少ない。技術支援してくれる人も組織も少ない。ほかの国際機関と協力しようと思っても、なかなか連携・協調が難しい。これは世界レベルでそのような取り残された国や地域への援助の仕組みを作ったり、連携・協調のメカニズムを作ったりする必要があるなと思った。そんなんで、今のグローバルファンドに行き着いたの。世界全体を見渡して、150カ国もの国々の感染症による死亡と新規感染の分布を見て、さらにそれらの国の経済状況を鑑みて、どこにどのような資金援助をしていったらいいか。どのような援助機関と連携協力をしながら技術支援をしていったらいいか。最も脆弱で見過ごされがちな人はどこにいるのか。その人々に必要なサービスを届けるにはどのような仕組みを作ったらいいか。ゴールやターゲットをどこにもっていくか、その成果を測る指標をどうするか、そのデータや情報をどう集めるか。そんなことを今やってるんだよね。現場から離れて寂しいけれど、また違った意味での刺激や挑戦はいっぱいありますよ。
葉田:へー、そうなんですね。
國井:多くの国際機関や政府、市民社会などを動かして、世界的な仕組みを作るにはいろんな知識や人脈が必要でしょ。だから最近は様々な国の政治家や外交官、民間企業や市民社会などと付き合うことも多いです。それに医療はそれだけじゃ人を幸せにできないから、食糧、教育、経済、環境、平和構築、情報通信など、様々な分野の人たちとの付き合いも増えましたよ。
葉田:すごいですね。僕自身は、多分勘違い力が甚だしいんですよ。泣いている人を見て、何もしなければ、その涙が無駄になってしまう。自分が行動すれば、涙や、亡くなった命に少しだけでも意味を持たせる事ができるかもしれない。そんな出会って人に対する気持ちだけは、大尊敬している先生にも負けないつもりだし、もっと上を目指そうという気になる。先生の原動力はどこにあるのですか?
國井:僕は人がどうであろうとなんと言おうと、他人と自分を比較しないで、自分が信じていること、やりたいことをやるのが一番だと思ってる。道に迷いそうになったら、何をやったら自分が楽しいかを考える。失敗しても挫折しても、自分が好きなことなら前に進めるからね。楽しいと思うことは、歳と共に変わることもあるけど、それでいいと思うんだよね。そうやっているといつの間にかどんどん前に進んでいく。原動力というか、自然に動いていく感じかな。
100人調査で分かったキャリアの法則性
葉田:僕は長崎でキャリアの迷子になっているときに、100人分のキャリアを調べ上げて、ひとつの法則性を発見したんですよ。
國井:すごいじゃない。
葉田:みんな情熱のままにやっているだけという。単純にキャリアのために進んでいる人はいなくて、先生のように、スーダンの川原先生も楽しいからやっているとおっしゃっていたし、それでいいんですよね。
國井:それが一番いいと思うよ。自分も昔はキャリア設計とか考えたこともあるけど、実は計画通りにできることなんてなかなかないし、偶然や人との出会いなどで人生は変わっていく。そのほうがまた自分が思っていなかった面白さや充実感が人生に加わっていく。
葉田さんの場合は書いた本が映画にもなって、既に多くの人に影響を与えているし、聞いてみるといい仕事してる。これからも楽しみだねえ。

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