
國井:川原先生はラガーマンだったっけ。前から知ってるけど、ナイスガイ。まっすぐな男だよね。
葉田:そうなんです。大人になってから色々考えてしまったのですが、川原先生と出会って、「誰かのために貢献したい」という、小さい頃に思った様なシンプルな気持ちが、やっぱり一番大切で、行動する理由はそれで良いんだと思えました。2014年にカンボジアで、生後22日目の赤ちゃんを肺炎で失い、ずっと泣いているお母さんに出会ったんですが、「ああ、お母さんが子どもを失う悲しみは世界共通なんだ。子どもの命を守りたい、お母さんの涙を減らしたい」とまたバシッとスイッチが入って。
帰国後、長崎大学の熱帯医学講座に学びに行き、誰か一緒にやってくれないかと探したら、ロールプレイングゲームのようにどんどん仲間が増えた。国際NGOのワールド・ビジョンに「カンボジアに病院を建てたい」と相談したら協力してもらえることになったり、ぴったりの小児科医にもめぐりあったり。そして、クラウドファンディングで当初の目標150万円を2日で達成して、最終的には40日間で480万円集まったんですよ。
國井:おー、すごいね。
葉田:その上、たくさんの人に「ありがとう」と感謝されて、NICU(新生児集中治療室)の先生も寄付してくださって。皆さん、こういうことをやりたいけどできないから、みたいな思いがあるんだなと。
國井:まさに思いを本当に実現してくれたという感じなんだろうね。今回、支援してくれた人をカンボジアの保健センターのオープニングセレモニーに連れて行ったとか。
葉田:そうなんです。いろいろな人に国際協力に興味を持ってもらいたくて、助産師さんになりたい人や高校生を連れて行きました。そしたら、「医者になってこの人たちを救いたい」とかスピーチしてくれて。国際医療ってすごく苦しいときが結構あって、そんな中で1%めちゃくちゃ楽しいときがある。それが麻薬みたいになって頑張るんですよね。
國井:そうだよね。
葉田:テレビに出ているNPOの人たちって、医者だから聴診器をあてて活躍しているように映る。僕は小中高とそれを見てきて、医者になって聴診器をあてたら村を救えると思っていたんですよ。
國井:ああ、だよね。僕もそう思ってた(笑)。
励まされた中学生からの言葉
葉田:でも、実際はまったくそんなことないと分かってしまって。カンボジアの病院プロジェクトを始めるときも結構いろいろへこんで、僕がやる意味あるのかと心に引っかかってた。でも、日本の最果ての与那国島で総合診療医として働いている時に、僕の本を見て医者になりたいと思った、と言ってくれた中学生がいて。自分一人の力はちっぽけでも、世の中に貢献できることもあって、影響を与えた人たちがなし遂げたことを積分したら、実はすごいことができるんじゃないかと気づいた。だから今やっている行動も、世界から見たら決して大きくないけれど、小さなことに思い切り心を込めたら、それを広げてくれる人がいるかなと。30代はそれをやりたいなと思っているんです。ただ、その先のことをどうしようかなと思っていて。
國井:今いくつでしだっけ?
葉田:今34歳です。
國井:若いねえ。28歳でバブって、そのあとぐわーっと行って、そしたらゴールや道が見えなくなった……。
葉田:やっぱり早いとだめですね。人間徐々に上がっていくのがいいと思いますよ。でも、その中学生との出会いに救われて、もっと成長していこうと今もがいている最中です。

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