三つめの留意点はリスク管理である。

 勇気や果敢さにはそれなりの裏付け、またリスク管理が必要になってくる。

 私は以前、アフリカで国連職員として働き、約200万人の母子を対象とした年間約250億円の保健・栄養・水衛生の事業を統括していたが、そこで最も重要だったのが、起こりうるあらゆるリスクを平時から想定しておくこと、その対応のための専門家と現地の信頼できるパートナーを見つけて具体的な準備と計画をしておくことであった。

 特に、私は当時アフリカでも最もリスクの高いソマリアで支援をしていたので、内戦、人質、旱魃、洪水、感染症流行などのリスクは「あることが当然」で、むしろ実際にどこで起こるかをシナリオ想定しながら、具体的な準備を行っていた。どこで内戦が激化したら、どこにいるスタッフをどこに退避させるか、難民がどこに急増するからどのような対処をするか、どの地域の陸路のサプライチェーンが遮断されるので、どのような陸路あるいは海路・空路のロジを使うか、などである。このため、優秀なセキュリティやロジの専門家を雇い、現地のNGO(非政府組織)や国際NGOなどと連携しながらリスク回避・緩和の準備・計画、実際に起こった時の対処を行うのである。

 日本の民間企業はリスク管理に長けているとは思うが、アフリカにおけるリスクは具体的に想像することが難しいことも多いので、現地で信頼できるパートナーを見つけることはもちろん、その橋渡しや現状把握・分析、適切なアドバイスのできる人材・組織をもつことが重要だろう。

アフリカを五感で知る人材を活用せよ

 その橋渡しとして活用できると思うのは、国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊や日本のNGOなど、アフリカに住み、地域に根ざして現地の人々と一緒に汗を流してきた日本人である。

 青年海外協力隊は、これまでアフリカ20カ国以上に1万人以上が派遣され、農林水産、鉱工業、商業・観光、教育、保健医療など様々な分野で活躍してきた。マラウィ、ケニア、タンザニアなどにはそれぞれの国に1000人以上の隊員が送られている。私の友人・知人にも何人かいるが、骨があり、愛に溢れ、行動力のある素晴らしい人が多い。

 隊員の中には任期後もそのままアフリカに住み続け、草の根の援助を続けたり、起業したりしている人もいるが、日本に帰り、就職先がなかなか見つからずにいる人も少なくないようだ。欧米社会ではこのようなアフリカでの実務経験に対する評価は高いところも多いが、日本ではあまり重視されない、または逆にマイナスにうつることもある。

 しかし、アフリカに進出する日本企業にとって、彼らのように現地で自らの五感をフル活用し、様々なリスクを感知しながら生活と仕事をしてきた人材は貴重である。彼らを積極的に採用・活用してはどうだろうか。