そんな中、今回のTICAD VIではアフリカにあまり関心のなかった企業のトップを連れ出し、アフリカ諸国のリーダー達と会い、その生の声を聴き、現地の民間企業と顔を合わせ、協力のための覚書を交わす機会を作った。

 さらに、フォローアップのために「日アフリカ官民経済フォーラム」を立ち上げた。官民連携を通じ、援助だけでなく、民間投資も含めてアフリカ開発を支援しよう、さらにそれを日本経済の活性化につなげよう、そんな意気込みを今回のTICAD VIでは強く感じた。

 意気込みだけではなく、これによってどんな成果が出るのか。今後のフォローアップがとても重要になる。成果文書としての「ナイロビ宣言」、その行動計画、「日本の公約」がどのように果たされるのか。もちろん、日本のみならず、アフリカ、国際社会の共同作業である。

多様性に対応し、慎重かつ果敢に

 ここで留意すべき点がある。

 ひとつは、アフリカの多様性に対する対応。アフリカには54もの国があり、私もかなり訪れたと思って数えたがその半数にも満たない。それでも訪れた国々の自然環境は、見渡す限りの砂漠から、鬱蒼と樹木が生い茂る熱帯雨林まで、全く異なる。外見は、モデルのようにすらっと細見で八頭身のような人々から、お尻の上に赤ん坊をそのまま乗せられるほど臀部が発達して小柄な人々まで、幅広い。アラブ系、マレー系、インド系、そして白人系の人々が多い国もある。国民性や性格も、気性が荒く自尊心の強い国から、シャイで謙虚な人々が多い国、仕事をゆっくりだが真面目に取り組む国から、仕事はどうでもいいやという人々の多い国まで。「アフリカ」と一口では呼べず、その多様性は半端ではない。しかも、同国内に異なる民族が数十もいる国もあり、国内の多様性も十分考慮しなければならない。

 これらの多様性を無視し、またそれぞれの国や地域の歴史、文化、風俗、宗教などを理解しないでパートナーシップを組もうとするとうまくいかない。特に、我々日本人がもっている常識や価値観とはまた違った世界がそこにはあるので、それらをひとつひとつ理解しながらどうやって歩み寄るかを考えなければならない。

 二つ目の留意点は、「慎重さ」と「果敢さ」のバランスである。

 今回のTICADでは、アフリカ側から、天然資源や農産物などの原材料を購入する、または車や電化製品、食料品などそれによって作られた最終製品を売るだけでなく、その途中のプロセスもアフリカへ投資して欲しい、アフリカのグローバル・バリューチェーンへの参入を支援して欲しい、そのためにアフリカの人材や企業・組織の能力構築に協力して欲しい、そのための対等なパートナーシップを組んで欲しい、などの強い希望も聞かれた。

 これを実現するためには、各国の状況をしっかり分析把握し、多様性を理解した上での投資、リスク管理が必要となってくる。

 アフリカに限らず、「日本人は援助もビジネスも慎重だ」といわれることが多い。中国や韓国の政府や企業が1、2回の会合や交渉で援助や投資を決めるのに、日本は何度も会合や交渉を重ね、調査・分析をして、結局、援助や投資をしないことも多い、との声を現地からよく聞いた。

 「日本は我が国に病院を建ててくれるというが、調査団ばかり送って一向に病院が建たないじゃないか」とアフリカのある国の要人が不満を言うと、日本の援助関係者が「それが本当かどうか、調査団を送りましょう」と答えたという笑い話まで聞かされた。私が以前、病院作りの事前調査に参加した時の話なので、笑えなかったのだが。

 もちろん、そこには、限られた予算の中で、現地にとって最も必要なものを、現地のキャパシティ、持続可能性などを十分考慮した上で最適な形で支援することを目指し、しっかり練られた調査・計画・実施・評価のプロセスが存在する。これを通じて、日本の援助は「質が高い」との評価を得ているのも事実である。

 今回のTICADで強調された、日本の「質の高い」インフラ投資、産業開発、人材育成、システム強化などへの援助や投資を進めるにも、それなりの慎重さや時間は必要である。

 しかし、最近のアフリカ開発の流れの速さ、他国の投資の速さを見ると、勇気と果敢さ、迅速さと柔軟性が求められるのも事実である。