では具体的に、どうやってアフリカの女子・若年女性の「女子力」を高め、HIV感染予防につなげていくのか。

 まず、ベースになるのはやはり教育、そして啓発である。

お互いに髪を結び合う職業訓練(ウガンダにて筆者撮影)

 「読み・書き・そろばん」は女性が社会で生きていくための基礎能力。さらに女子の能力を高め、自立を促し、社会的地位を向上させるには、中等・高等教育、職業訓練の機会も増やす必要がある。

 女子は小学校や中学校に入っても、中途で辞めざるを得ない理由がたくさんある。特に、家庭の貧困、親や地域の不理解、十代の妊娠・結婚などが大きな問題である。

 具体的な支援としては、本人、そして両親や地域に対する女子教育に関わる意識改革プログラム、貧困家庭に対する女子の初等・中等教育継続のための現金給付(Cash Transfer)、さらに、女子や若い女性に対する職業訓練や雇用促進、高等教育のための奨学金制度などがある。

 学校を辞めてしまった女子に対しては、学校への帰還プログラム、地域での補修プログラムなども提供する。

「ライフスキル」を磨く

 学校の教育プログラムだけでは「女子力」を磨くには不十分。実際に地域に横たわっている様々な問題に対して、個人が具体的に、効果的に対処できるための能力「ライフスキル(Life skill)」を磨く必要がある。

 この「ライフスキル」とは、世界で問題となっていた青少年の飲酒・喫煙、薬物乱用、無防備な性行為、学校中退・退学などを未然に防ぐ方法として、1993年にその概念、そして具体的な教育プログラムが導入され始めた。

 そのスキルには、自己認識(Self-awareness)、共感(Empathy)、効果的コミュニケーション(Effective Communication)、対人関係(Interpersonal relationship)、意志決定(Decision Making)、問題解決(Problem Solving)、創造的思考(Creative Thinking)、批判的思考(Critical Thinking)、感情対処(Coping with Emotions)、ストレス対処(Coping with Stress)の10項目があり、それぞれの項目のスキルを磨くための教育・訓練プログラムが用意されている。

 これらのスキルは、本来、子どもが成長して、思春期を経て成人になるまでの心身の発達段階で少しずつ身に着け、人格的・社会的発達に必要なもので、家庭教育、学校教育はそのスキル獲得の一端を担うべきものである。

 しかし現実には家庭・学校・社会が、女子にこれらのスキルを得る機会を与えないばかりか、前述の通り、男尊女卑の観念を植え付け、女子に負の成長・影響を与えることもある。

 そこで、学校、そして地域でライフスキル研修を積極的に導入し、女子や若い女性に「女子力」を磨いてもらい、さらにその両親、同世代の男子・男性、村の長老などを巻き込んで、家庭や社会の中でライフスキルを発揮できる状況・環境を作っていくのである。

 HIVが蔓延している地域では、知識だけではなく、具体的にどうやったらその感染リスクを回避できるか、感染の可能性があった場合、どう対処するのか、女子の身の回りで起こりうる様々な問題・課題への対処を具体的に想定しながら訓練し、実践させていく。

 たとえば、男性からの無防備なセックスの要求に対しては、うまく断る方法を学んでいく。相手を好きになって関係を築きたい時を想定して、安全な避妊やHIVを含む性病予防の方法を教え、具体的にどこでコンドームを入手するのか、どのように男性につけてもらうように説得するか、実際にどのように装着するのか、どうしてもつけてもらえなければ、いかにうまく断るか、などを仲間同士で具体的なシミュレーションをしながら学んでいくのである。

 ライフスキルは上がっても、家が貧しく、自分が自立できなくては、中年男性からの援助交際の誘いがあった場合に断ることができない。

 そのため、ライフスキルは前述したような経済的自立につながる職業訓練や雇用促進とうまく連携しながら実施することが重要で、洋裁や理容などの職業訓練、さらにその立ち上げに必要な資金をマイクロファイナンスなどで提供する支援と合わせることでさらに効果的になる。

 さらに、女子力をアップしても、HIV感染率や感染リスクが高い地域では、どこからともなくウィルスは彼女たちに忍び寄ってくる。

 そのため、コンドームなどによる感染予防、検査やカウンセリング、さらに治療などをどんな地域でも入手できるようサービス拡大への支援を行っている。

 以前は大病院に行かなければならなかったHIVの診断・治療も、近年ではウィルス量の測定など一部を除いて、辺地でも可能になってきている。

 さらに、コンドームをつけ忘れてもHIV陽性者が他人に感染させるリスクを下げるためことのできる暴露前予防投薬(Pre-Exposure Prophylaxis; PrEP)や、性的暴行などを受けてHIVに感染するリスクを下げるためのHIV暴露後予防投薬(Post-Exposure Prophylaxis;PEP)などのサービスも拡大してきている。

 また、性活動が活発になる年齢までに、男子に自発的に医学的男子亀頭包皮切除手術(Voluntary Medical Male Circumcision;VMMC)を行うことで、HIV感染を60%も減少させ、一か国でも数十万人のHIVを予防できることがエビデンスとしてわかっており、アフリカのHIV高蔓延地域では積極的にこのサービスを提供している。