では、どう対処していったらよいのだろう。

 結論からいえば、原因・誘因があまりに複雑で、多岐に渡り、根深いため、これらの問題を一気に解決できる単独の⽅法、魔法の杖はない。

 私は以前、ユニセフで女子や女性に関わる様々な健康問題に関わってきたが、その抜本的解決には教育、水・衛生、栄養、保健・医療、保護、アドボカシー(政策提言)など多角的で中⻑期的な対策が必要であった。それには時間もかかる。

 しかし、夢や希望に溢れる世代の思春期女子や若い女性が、毎週7000人以上もHIVに感染する現状である。彼⼥たちを一刻も早く、⼀⼈でも多く、感染から救わなければならない。

 そこで我々は今、思春期女子や若い女性にフォーカスを当てた対策を急ピッチで進めている。特に、私が所属するグローバルファンドと米国政府が主導する米大統領エイズ救済緊急計画(President's Emergency Plan For AIDS Relief;PEPFAR)はその予算と影響力が大きいため、国の状況に応じた具体的な支援を連携・協力している。

本当の「Girls power」

 ここで、解決策のための重要なキーワードをひとつ挙げろといわれたら、私は迷わず「エンパワメント」または「女子力」を選ぶ。

 とはいっても、日本で使われる「女子力」とはかなり意味が違う。

 日本で2009年の新語・流行語大賞にノミネートされた「女子力」の意味を調べてみると、就職活動や結婚活動などに有利になるような、「女性にしか出せない魅力」「男性を惹きつける力」だそうだ。

 さらに、「女子力をアップする方法」をネットで検索すると、美容院に通う頻度を多くする、ファッションに気を付ける、手先のケア、部屋をきれいにする、恋愛スイッチをON、笑顔・・・などが出てきて、正直言って、日本って平和だなあ~と私などは感じてしまう。

 この言葉を女子が自ら好んで使っているのであれば、とやかく言う必要はないのかもしれないが、男性が「女子とはこうあるべき」との期待や女子の価値の高さ、低さを表現する言葉であるのなら、ポリティカル・コレクトネスの観点から、グローバル社会ではNGの言葉となるであろう。

 しかし、国際的に「Girls power(女子力)」はよく知られ、よく使われている言葉でもある。ただし、その意味や意義は、日本の「女子力」とはかなり異なっている。

 「Girls power」はそもそも1990年代に米国のパンク・バンドBikini Killが主導した"Riot Grrrl"(ライオット・ガール)ムーヴメントの合い言葉で、「女子のエンパワメント」「独立独歩」「自信・自尊心」を鼓舞するスローガンとして広がった。

 さらに、この言葉を世界的に知らしめたのはイギリスのスパイス・ガールズ(Spice Girls)。Girl Powerを主張する1996年のデビュー曲『ワナビー(Wannabe)』は20年経った今でも色褪せぬばかりか、最近、国連のキャンペーンのためにリメイクされ、その言葉の意味、メッセージを世界に発信し続けている(→こちら)。

 特にこのビデオでは、少女たちへの教育、男女同一賃金、低年齢での強制結婚や女性たちへの暴力の撲滅など、女性たちが「本当に、本当に欲しいもの(really really want)は何?」と訴えかけている。