一方、国際目標達成のために加速化するには、現存する診断・治療法だけでは不十分である。研究開発による新たな診断・治療・予防法が必要である。

 結核対策のひとつの難しさは、HIVやマラリアのように現場で簡便かつ迅速に診断できる方法がないことである。

 長らく結核で用いられてきた検査診断法は胸部レントゲンと喀痰を使った顕微鏡検査であるが、肺以外の結核の場合、また喀痰が採れない場合、この診断精度はとても低くなる。

 最近になって、GeneXpert(ジーン・エクスパート)という全自動遺伝子検査システムが市場に出回り、より正確・迅速・簡便に薬剤感受性および耐性の結核診断ができるようになった。結核対策に大きな進歩を与えたといえる。しかしながら、電気のない僻村では使用できず、いまだ機器本体は高価で、使い捨ての試薬カートリッジも途上国には決して安価とはいえない。

 我が国の民間企業、栄研化学、ニプロ、富士フイルムなども結核の検査・診断で有望な製品を作っている。今後に期待したい。

 治療薬については、40年ぶりに新薬が開発され、その一つは日本の大塚製薬が開発したデラマニドである。薬剤耐性結核で命が助からなかった、また難聴などの強い副作用をもたらす治療薬を飲まざるを得ない時代から見れば「夢のような薬」である。 

 既に多くの国々で使用され始めているのだが、ここで気をつけなければならないのが使い方である。適切に使用しなければこれらの薬にも耐性ができる可能性が高いのだ。これらの薬にも耐性菌ができることも十分考慮して、新薬の開発にも投資しなければならないのである。いたちごっこに見えるのだが、それがすぐに改善できない現状においては、新薬の開発も必要である。

 さらに世界中が待ち望んでいるのがワクチン。

 現在使用されているBCGワクチンは、乳幼児の結核予防や結核感染後の重症化を抑える効果はあるが、成人の結核の発病予防への効果は明らかではない。また、BCG接種により結核スクリーニングに有用なツベルクリン反応が陽性になってしまい、使用不可となってしまう。米国など結核罹患率がとても低い国では定期的なBCGワクチン接種をもはやしていない理由である。

 そのため、世界では乳幼児により効果的で、成人にも効果的なワクチンの開発が待たれているのである。

 このような新薬やワクチンなどの研究開発に必要な資金は、現状の約3倍の年20億ドル(約2250億円)と考えられ、今回のハイレベル会合の政治宣言の中にも盛り込まれている。

知的財産権の保護を主張するアメリカ

 この研究・開発に絡んで、政治宣言づくりの段階で対立したのが、知的財産権の保護を主張するアメリカと治療アクセスの拡大を主張する一部の市民社会・途上国である。

 アメリカを中心に先進国に本拠を置く製薬企業が開発・製造した医薬品の多くは特許権の保護を受け、その企業に価格を決めることができる。新薬の中には高価な医薬品も多く、特にエイズ治療薬が開発された頃は併用療法で一人あたり年間100万円を超える価格だった。

 これに対して、世界貿易機関(World Trade Organization:WTO)は加盟国によって2001年に「ドーハ閣僚宣言」を採択し、感染症の世界的流行など公衆衛生上の危機が生じた場合に、WTO加盟国の中で知的財産権が保護されている医薬品の製造や輸入、また安価なジェネリック医薬品の製造と輸出を可能にしようとの取り決めがなされた。高価な治療薬が開発途上国の人々に届かない現状を打破するための措置であった。

トランプ大統領が通過するための道路封鎖。護衛を含めて30台以上の車が通過し、30分以上に渡った。