日本に求められる官民学の連携強化

武見:そうですね。日経アジア感染症会議のケースは、企業の参加と活性化を一つの柱として、政府が政策的に整えたことが特徴的でした。さらに国際機関と連携して国境を越えたネットワークを形成させた。このように戦略的な枠組みを常に意識する必要があって、私の役割はいつもそこにある。「仕向ける」役割だと自覚しています。

國井:アメリカ、イギリスに比べると日本はまだ官、民、産、学ががっつり組むことが少ない。もったいない印象があります。

武見:国際機関というのは、きれいごとだけでは動かない。例えば医薬品ジャンルは、企業の利益につながる話がたくさんあって、許認可一つでビジネスが大きく影響を受ける。こういったジャンルはWHOの許認可文化を見ても、確実に欧米系が強い。日本はもっと人材を送り込んで、許認可のレギュレーションに関わる役割を担えるようテコ入れする必要がある。そういうプロセスを熟知すれば、日本企業が政府の支援を受けながら途上国で臨床治験をより効果的に展開できるようにもなる。

國井:許認可に関わる国際機関にとって透明性、公正性は基本原則ですが、そのプロセスやメカニズムを熟知しているかどうかでも大きな差がでます。その意味ではそのような国際機関で働く日本人、メカニズムを熟知している日本人が少ないところは弱点でしょうね。グローバルヘルス全体として世界的に活躍できる日本人の人材が少ない。

武見:漠然と「少ない」と嘆くのではなく、具体的な政策目標を作って人を育てる必要があるよね。外務省にはもっとしっかりやってほしい。

國井:とはいえ、武見さんが撒かれた種はどんどん育っている印象です。超多忙な中、グローバルヘルスにご支援いただきありがとうございます。

武見:もう少し時間を取って女房と仲良く過ごしたいと願いつつ(笑)、カタリストとしての役割はまだ果たしたいと思っています。誰が担い手になろうとも、グローバルヘルスの問題に関係省庁が連携して取り組める仕組みを作りたい。官民に加えて国際的な視野を持つアドバイザリーグループも組み込んだ形で戦略的に取り組めるようにする。これからは5年ほどはそのような仕組みを制度化させることが私の課題です。

國井:来年は第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が8月に横浜で開催されるわ、G20サミットが大阪で開催されるわ……大忙しの年になりそうですね。

武見:そうそう、大きな国際会議が続くんです。私はこのような会議をバラバラに開催しても意味がないと考えていて、全体的に見てどの役割をそれぞれの会議が担うのかを明らかにしたい。これから3年の間に開かれるグローバルヘルスに関わる国際会議を通じて、最終的には2030年のUHCや他のターゲットを達成できるようなシナリオを具体化していく。そのカタリストとして、ストラテジストとしての役割を日本が担うイメージです。一連の国際会議を戦略的にどう活用するかという国際会議を9月に東京で開く予定です。

國井:その9月には結核についての国連総会もありますね。

武見:そう。その後には日米の2国間で「ヘルスダイアローグ」という保健相参加の官民連携会議も予定しています。アメリカ側のパートナーは米国医学研究所のビクター・ジャウ会長で、いま打ち合せを進めているところです。

國井:トランプ政権が相手だったら大変でしたね!

武見:そうそう、パートナーと突然連絡が取れなくなることもある。NSC(国家安全保障会議)のヘルスセキュリティ担当シニアディレクターがポストごと無くなって、あれには本当にまいったね。ボルトン国家安全保障問題担当補佐官が誕生した途端、このようなことが起こるようになった。アメリカの安全保障は、伝統的な狭い概念に回帰しているのではと危惧しています。

國井:アメリカが世界で一番グローバルヘルス分野に投資しているのに、今の動きは見ていて不安になりますよね。イギリスもBrexitで揺れ動いていますし……。来年のグローバルファンドの増資会合はフランスのマクロン大統領が主催してくれることになり、頑張ってくれていますが……。日本のリーダーシップにますます期待しています。

武見:日本の役割や責任は重いと痛感しています。

國井:まずは来年の選挙、ですね。

武見:だから選挙のことは言わないでって(笑)