國井:確かに、私もこれまで現場の惨状を見ながら仕事してきて、「クチ」よりも「おカネ」出して! と叫びたくなることが多々ありました。「沖縄感染症対策イニシアチブ」には私も関わりましたけど、30億ドルのコミットは世界的にもインパクトがありましたね。洞爺湖サミットでは横断型アプローチの大切さを世界に呼びかけて、伊勢志摩サミットでUHCにつなげる。厳しい日本の懐事情の中で、資金的コミットも継続してくださいました。

武見:MDGs(国連ミレニアム開発目標)がある意味成功したので、みんな必死になってSDGsにも取り組んでいる。2030年までに目標達成は不可能であっても実現する努力ができるように、横断型の共通政策概念を作った。UHCがSDGsの中で採択されると、今度はUHCが保健医療政策全体に影響を及ぼす概念として認知されるようになった。この政治的プロセスで実は日本は大きな役割を担ったんです。それが、昨年12月に東京で開催された第1回「UHCフォーラム2017」です。

國井:私も出席しましたが、あれはすごかった。グテーレス国連事務総長にジム・ヨン・キム世界銀行総裁、テドロス・アダノムWHO事務局長にアンソニー・レークUNICEF事務局長も参加しましたね。うち(グローバルファンド)はマーク(事務局長)が任期満了で次期事務局長の選考過程でしたので、官房長のマライケの参加でしたが……。

武見:5つ以上の国際機関のヘッドが参加して、大きなインパクトを残した。もともとは世銀のジム・ヨン・キム総裁が2016年開催の「TICAD VI」(第6回アフリカ開発会議)の場で、保健分野で協力しようと声をかけてきたの。どこまで努力するとUHCをどの程度達成できるようになるか、測定できるプラットフォームを作って定期的に達成度を確認できるようにしたいから、「敬三、手伝って」と。財務省に相談してみたら快諾が返ってきた。後からWHOのテドロス事務局長からも協力の申し出があって、それで世銀とWHOの間でタスクフォースができて第1回の会合で測定に関わる基本的な提案ができたという経緯なんです。

UHC達成には財務省の協力が必須

國井:UHC達成には先進国、そして途上国政府の財務省の協力が不可欠ですね。

武見:そうなんです。実は第1回会合の開催2週間前に麻生太郎財務大臣に頼んで、「UHC達成において財務省や財務大臣が役割をどう担うか」をテーマに論文を書いてもらった。第2回目UHCフォーラムのテーマはまさに「持続可能なUHCを達成に向けて財務大臣をどう意思決定に組み込んで保健大臣とどう協力させるか」でした。日本は、麻生大臣の論文発表に加えて第1回会議1週間前に23億ドルほどのUHCに関わる財政的なコミットメントを発表した。「理屈だけではなく金も出す」と示せたことで、日本の役割は高く評価されてその後の展開にも大きな影響を与えたの。

國井:どの国でも、保健医療分野は資金確保が難しくて、国家予算全体の2~3%しか保健医療に割り当てられない国もある。

武見:UHCは自国の資源を活用することで、初めて持続可能なファイナンシングになる。その国の財務大臣が重要性を理解すること、また保健大臣が計画的にUHC達成に向けた政策を策定することが必要となるんです。財務大臣に動機付けをして保健大臣と協力させるようなインセンティブクリエイションの場として、第1回のUHCフォーラムが設定された。WHOのテドロス事務局長も来ていたのは、その効果の一つだと見ています。

國井:あのフォーラムには、そのような背景があったのですね。

武見:麻生大臣にはさらに世界銀行の春季大会で、各国の財務相や財務省関係者を集めたUHCに関する会議を設定するように依頼しました。「世銀のジム・ヨン・キム総裁がYESなら協力する」ということで、1月にワシントンDCでジム・ヨン・キムさんと1時間ほど話してきました。その場でジム・ヨン・キムさんからは「ヒューマンキャピタルへの投資は経済成長にも確実に影響する。その因果関係を証明したい」と提案があった。そこで保健医療の人材育成分野に投資をするとどう経済成長につながるのか、測定できるインデックスを作ろうということになった。財務大臣が自分の国のインデックスを見れば、経済成長に向けた保健分野への投資判断ができて、財源配分の動機付けにもつながる。このことを世界銀行の春季大会で発表したいとなった。

國井:無事に「YES」を取り付けたのですね。