格差是正にインパクトを与えた「女性の休暇日」
もともと海国、ヴァイキングの国として、男性は漁や交易・襲撃のために家を空ける期間が長く、女性は家を守り、家事・子育てに従事して、男女の役割の違いは明確だったという。
アイスランドでは女性参政権が日本よりも30年早い1915年に認められたものの、1983年までは女性議員の占める割合は2-5%程度で、日本とあまり変わりはなかった(1983年の日本の女性議員は衆議院で1.6%、参議院で7.1%)。
この国の男女格差の是正に大きなインパクトを与えたのが「女性のゼネスト」ともいうべき「女性の休暇日(Women's Day Off)」である。
最初に実施されたのが1975年10月24日。
アイスランド女性の9割が仕事や家事などの労働をストップし、教員、保育士、看護師、会社や商店の従業員なども休暇をとった。主婦も食事を作らず、赤ん坊を夫に手渡したという。
その結果、学校・保育園は閉鎖し、病院機能も麻痺し、閉店せざるを得ない店やレストランも続出した。新聞は印刷できず、電話交換手は応答せず、いくつかのラジオ放送局も放送ができなくなったらしい。
女性がいかに社会に貢献しているか、それでいながら女性の価値がいかに低く見られていたか、世に知らしめた出来事となった。
「女性の休暇日」はその後も1985年、2005年、2010年、2016年に開催され、その度に、男性は女性の重要性を思い知らされたという。
それ以外にも様々な努力がなされ、女性が職場に乳児を連れて授乳を続けること、従業員50人以上の企業では女性管理職比率を4割にすること、母親3カ月、父親3カ月、さらにプラス3カ月の育児休暇を分担して取得すること、性別による賃金格差を禁止することなど、次々に男女平等に向けた法整備、環境整備がなされていった。
「平等は待っていても来ない(Equality won’t happen by itself)」というが、アイスランドでも男女平等を女性自らが闘い、勝ち取ってきたのである。
アイスランドに次いで男女格差が少ない国を見ると、ノルウェー、フィンランドなど健康や福祉、幸福度などでも世界ランキングの上位を常に占める北欧諸国だったが、なんと世界第4位に躍り出ていたのはアフリカの小国、ルワンダである。
私自身、ルワンダには何度か足を運んでいるが、確かに私の友人・知人には元保健大臣、大学学長・教授、病院長など重要なポストに就いているルワンダ人女性が多い。彼女らは私も歯が立たないほど弁が立ち、優秀で勤勉、それでいながら謙虚で柔和である。
では、なぜルワンダで男女格差が少ないのか?
それにはやはり、1994年に100万人近い死者を生んだ大虐殺と内戦が関連しているようだ。
この凄惨な過去によって、多くの男性が死亡し、国外に逃亡したため、虐殺後に生き残った人口約600万人のうち6割以上は女性であったといわれる。そのため、国や地域の再建には女性の力が必要で、元来、教育も十分に受けられず、社会進出もままならなかった女性のエンパワメントや人材育成、そして社会での人材登用が積極的になされたのだ。
特に、女子教育や女性の保健医療に力が注がれ、1999年にはジェンダー推進省(Ministry of Gender and Women’s Promotion)を設置することで女性の能力開発や雇用をさらに促進し、2003年には国会議員の3割以上を女性とするクオータ制(割当制)を導入することで男女平等に向けた政治的意思・法整備をさらに高めていった。
人口が虐殺直後の約2倍、男女比がほぼ1:1(女性51%)になった現在でも、女性の躍進は続き、女性議員の占める割合は60%を超え、男性議員の2倍近い数となっている。この数字はもちろん、世界一である。
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