今回の日本の豪雨災害においては、7月6日午前5時半時点で避難勧告や避難指示が全国17府県で計約141万人に出されていたという。しかし、大丈夫だろうとの油断や、どこにどのように避難したらいいかわからない、という人も多かったという。

 自治体が出す避難情報には「避難準備」「避難勧告」「避難指示」の3段階があるが、それぞれの段階で、具体的にどのように行動したらいいのか、本当にわかっている人はどれくらいいるのだろうか。自治体職員でさえも、その具体的なアクションをきちんと言える人はどれだけいるのだろうか。

 自治体によっては、従来型のハザードマップに加え、地域に起こりうる災害特性を記載した「気づきマップ」、どのタイミングで避難行動を行うかを示した「逃げどきマップ」などを作り、積極的に広報や啓発活動をしている地域もあるようだ。しかし、それでも本当にそれによって100%の住民が適切に行動できて、実際にリスクを回避できるのであろうか。

 他人からの非難(Criticism)でなく、これで十分なのか、被災や犠牲を最小限に抑えることができるのか、と常に自ら批判的に(Critical)に災害対策や防災を見直し、改善し、アクションにつなげる必要がある。

住民側に立った視点の必要性

 特に、今回の災害の教訓を基に、これまで作成してきた災害対策・防災計画を、「住民側に立ったアプローチ(People-centered approach)」という視点でもう一度見直す必要があるだろう。

 私のこれまでの経験で、戦略や計画がどんなに良くとも、それらの成功への貢献度は10%で、その戦略や計画を具体的にどのように実施していくのか、そのオペレーションに90%の成功がかかっていると感じている。

 災害による犠牲者・被災者を減らすには、徹底的に住民側に立った計画と準備、そしてオペレーションが重要で、それに合わせたリスクコミュニケーションが重要である。

 それには、政府や行政だけが計画・立案するのでなく、地域・住民がその計画・実施・評価・改善に参加することも大切である。

 さらに、住民側も政府・自治体だけに任せるのではなく、災害から身を守るために住民個人ができること、すべきこと、地域ぐるみで、また住民参加でできること、すべきことを明らかにし、災害対策や緊急支援の計画・準備に明記しておくことも重要である。

 今回の緊急支援で、災害ボランティアが全国から5万人以上も集まったと聞く。災害医療や緊急援助の専門家を含め、私の友人・知人たちも被災現場・避難所に駆け付け、毎日のようにSNSで現場の様子を伝えてくれた。

 猛暑の中、身を粉にしての支援活動に心より敬意を表しながら、それらの報告を読んでいると、東日本大震災や熊本地震に比べ、緊急支援の初動体制、避難所での早期対応・対策などが大きく改善されているのが見てとれる。

 特に、避難所での「雑魚寝」は「段ボールベッド」の導入が進み、間仕切りによる「プライバシーの確保」、避難所内の「土足厳禁」、避難所に入る前の「手の消毒」など、過去の災害の教訓が活かされている。

早い時期に避難所に導入された段ボールベッド(写真:石巻赤十字病院 植田信策医師撮影)