國井:自分は特に最近そう感じるんだけど、海外でずっと活動していると、何か自分の祖国、日本の地域のためにも貢献したいという気持ちにならない?

大西:僕らが今、関心を持っている領域は、日本の地方をどう立て直すかということです。あらゆる分野において。もちろん自分たちの比較優位性を考えて、自分たちで全部やるとは言わないけれども、医療もしかりだし、福祉もそれに連なっているし、農業もあるし、それから観光だって最近は馬鹿にならない産業になっている。そういったものの全体をコーディネートできる人材というのが地方は少ないんですよ。それを、外国人も含めて養成しながら、なおかつそれを海外にも展開できるようにしていきたいんです。

國井:面白いねえ。僕も栃木に生まれ育って、仕事して、長崎にもしばらくいたけど、日本の地方って、いいものがたくさんあって、可能性がたくさんあるけど、確かにそれぞれの資源やセクターがもっとうまく連携・協働すれば、相乗効果やイノベーションが生まれるのになあ、って思うことあります。日本の地方と海外をつなぐ発想も面白いね。

大西:僕は25歳の時、イラクで四国ぐらいの面積を任されていまして。

國井:すごいね。

大西:任されていたと言っても、政府は崩壊しているし、我々もまだ弱小NGOで残念ながら何もできない状況だったんですけど、他に誰もいないから仕方がない(苦笑)。

國井:でも貴重な経験だよね。日本で普通に生活している25歳の青年がいきなり四国のマネジメントを考えることなんてないから(笑)。

大西:もちろん最初はもっと狭いエリアから。中央政府から諦められているような自治体でも、やる気のある首長がいれば一緒になってやっていくという形で。すでにいろいろ動き出しています。

國井:僕が働いていた山村でも、老人会、婦人会、青年会、そして母子保健推進員やら食生活改善推進員やら、いろんな組織や人材がいて、村人の健康を一生懸命守ってました。保健医療以外のセクターでも同じような感じ。これって途上国から見ても、先進国から見てもすごいと思う。地方だから人材やリソースがないわけじゃなくて、実は活用できるのにされていないリソースやメカニズムがある。

大西:そういった人たちも含め、どう再編していくか。これまでの仕組みではジリ貧という状況にあるのだから、どう変えていくのかが重要になるわけですが、それはこれまでの常識を捨てることが必要になるわけで、当然、抵抗もあって…。

國井:もったいないね。

大西:僕らは日本語を話すけれどエイリアンで、ある程度、これまでの経験から装甲板も厚いので(笑)、そうした旧来の仕組みを壊し、変えていく役割を日本の中でやろうと思っています。
 日本人ってまじめなんだけど、まじめすぎるから、要は自分の前に柵を作って、その柵ができたらまた小さい柵を作って自分たちをそこに追い込んでいくんですね。どんどん柵が小さくなる。すると、やれることも、どんどん小さくなる。でもそれじゃ相乗効果は出ませんよねという話をしながら「本当にこの柵は要りますか、取り払いましょう」と説得をして回っているところです。

國井:最近はどう変わったか分からないけど、医療界なんかもその柵が多かったなあ。

大西:そうですね。

國井:医者って2人集まるとセクトができる(笑)。

大西:3人集まると内戦が始まる。医者が戦争を始めてどうする(苦笑)。

“踏まれた”子どもたちに、チャンスを

國井:さて、すでにいろいろなことを仕掛けている大西さんですが、これからさらにやりたいことがありますか。

大西:2つあります。

國井:教えてください。

大西:ひとつは、不条理な理由で勉強できなくなった子どもたちを世界中から募って、奨学金をつけて、彼らが学べるインターナショナルスクールを日本の山間部とか島嶼部に設立して、さらに大学、大学院までのスカラシップも支援できる仕組みを作りたいと思っています。
 いわゆるインターナショナルスクールというと日本では富裕層向けのイメージがあるけれど、ここでは、例えば戦争とか大規模災害とかで学業を諦めざるを得なかった、でも勉学意欲のある優秀な子どもたちをサポートしていきたい。日本の貧困家庭などの枠も作って。

國井:日本のグローバル化、国際貢献、地域再生を一緒に実現できて面白そうだね。未来を担う子どもたちのためにぜひ実現してほしいね。

大西:若い時に“踏まれた経験”がある子たちにも、ちゃんとチャンスが与えられる仕組みを作りたいんです。
 そして授業では、その仕組みの意味についてもしっかり教えていく。なぜあなた方がここで特別な配慮をもって勉強することができているのか。それはあなた方がお金持ちになって人を虐げるのを幇助するためではなく、自分たちだけの幸せを追い求めるためでもなく、その能力を使って、かつてのあなたたちと同じように困っている人たちのために貢献してほしいのだ、と。そんな話をして、そこから、次代のソーシャルイノベーターとして頭角を現す人材が出てくることを期待したいなと。

國井:助け合うことを我が事として学び、施された者が施す者になって社会を変えていく。そこに日本が貢献できるなんて素晴らしいね。