テクノロジーによるマイノリティーサポート

國井:改めて、いわゆるマイノリティーとされる人たちへのサポートについて話していきたいと思います。

 僕が所属しているグローバルファンドでは、例えばLGBTの人たちも、HIVに感染した人たちも、どんどん事業計画やその実施に加わってもらって、彼らの視点からいろいろなことを提言してもらって、それを政策にも反映させていったりしています。
 世界100カ国以上で事業を展開していますが、その中にはゲイというだけで殺される国もある。以前ミャンマーで3年ほど働いていた時は、軍事政権下で、女性が街中に立っているだけでセックスワーカーと決めつけて投獄されることもある。コンドームを持っていれば、これが証拠だとなるので、セックスワーカーがコンドームを持たなくなる。そこでHIVが広がる……。方針なき規制は実態をアンダーグラウンドに追いやり、かえって対策を遅らせ、事態を悪化させることにもなる。

乙武:想像力を駆使しても追いつけないような現実がそこにはありますね。

國井:他方、タイでは100%コンドーム政策を打ち出しました、売買春があるという現実をひとまず認めて、ただし病気をうつさないように100%コンドーム使用を徹底させ、定期的に性病やHIVの検査もして、感染者には治療をして、ということを続けました。その結果、HIVの拡散はぐんと抑え込まれたんですよ。
 対策は現実をしっかり把握したうえで実施しなければ効果は期待できない。マイノリティーの声をいかに吸い上げるか、ということが大事だけれど、日本ではそういうプラットフォームは増えているんだろうか。

乙武:LGBTについては増えてきたように感じますが、それ以外は特にそう大きな変化があったというのは感じないですね。
 ただ、それ以上にテクノロジーの進化というものがマイノリティーの人々の発信には大いに寄与していると思っています。まず何より私のような身体障がい者であったり、車いすユーザーというのは、家を出てある一定の場所までたどり着くということにすでに大きな困難を抱えてきたわけなんですよね。
 今は街なかのバリアフリーというのも進んできましたけれども、それ以上にインターネットというものを介して、世界中とつながることができるということが何より大きいと思うんですね。メールやメッセージ機能を使って、今だったら「Skype」のようなビデオ通話を使って、遠くにいても簡単にコミュニケーションを図ることができますから。

國井:バーチャルなコミュニティーができた、と。

乙武:例えば、私の友人はビデオ通話で手話通訳を提供するサービスを行っているんです。鉄道とか銀行の窓口に聴覚障がいの方がいらっしゃった時に、そこにあるタブレットで手話通訳者につなげば、そのお客様と手話でコミュニケーションを図ることができるんです。このようにテクノロジーのおかげで、障がいのある人が社会にアクセスしやすい状況というのが少しずつ整備されてきているのかなと感じますね。

孤独に追い込まないためにできること

國井:インターネットなどで発信している人は増えている?

乙武:多いですね。私が生まれ育った時代というのは、まだ障がいは隠すべきものであり、恥ずべきものととらえられている傾向が強かったのが、40年経って「理解を求めるために自分が発信していかなきゃ」という意欲を持った障がい者の方が、ずいぶん増えてきたのかなという印象は受けますね。

國井:ITが「自分から動く」きっかけになっている。

乙武:もう1つインターネットが大きかったなと思うのは、同じ境遇の仲間を見つけやすくなったこと。特にLGBTの方々にとっては大きかったようです。昔ならば自分が同性愛者であることを自覚しても、相談できる人もおらず、自分はおかしな存在なんじゃないか、異常な人間なんじゃないかと自己嫌悪に苛まれていたそうなんです。そして、こんな自分が社会でやっていけるはずがないという絶望から、10代のうちに命を絶ってしまうというケースが、決して少なくなかったようなんですね。
 もちろん今でも少なくはないんですけれども、今はインターネットがありますから、すぐに同じ境遇の人々がいることを知る。あ、自分だけじゃないんだ、と。世の中の大多数は男性が女性を、女性が男性を好きになるけれども、自分と同じように同性を好きになる人もこの世の中にはいるんだということが分かってすごく安心した、と。

國井:そうだね。

乙武:LGBTの子たちの話を聞くと、都心部で育った子と地方で育った子では、感じてきた窮屈さに大きな違いがあるんですね。
 都心部で育った子は、もちろんつらかったけれども、まだ吐露できる相手がいたり、自分と同じ境遇の人やロールモデルを早い時期に見つけることができているんです。
 ところが地方だと、まだまだ閉鎖的なところが多いようで、同じ悩みを持っている人、相談できる人となかなか出会えなかったというんですね。それが東京に出てきて、初めて孤独から解放されたと。
 でも、インターネットのおかげで全国には同じような悩みを抱えた仲間が多くいるんだと知ることができ、たとえネット上でも相談したり、交流を図ったりすることで救われている子も少なくないんです。そうした意味でも、インターネットの普及は大きかったなと。

國井:ネットも、メディアも、もっと力を発揮できるはずですね。