医療セクターについては、日本ではすでにクラスター・アプローチに近い連携・協力ができている。

 阪神淡路大震災以降、発災直後の救急医療から、避難所や仮設住宅での慢性的な医療課題への対応まで、様々なニーズに対応するためDMAT、JMAT、PMATなど様々な医療支援チームが立ち上がり、それを効果的に調整・協力させる必要性が現れた。これに対し、東日本大震災においては、石巻、南三陸など医療圏ごとに医療コーディネーターが活躍し、全国から支援に来た医療チームをうまく連携・協力させた。この好例・教訓も踏まえ、今後、医療分野ではクラスター・アプローチに似た形でさらに発展していくのではないかと期待している。

 しかし、シェルター、食料・栄養、水・衛生、情報・通信、ロジなどのセクター・課題では行政、企業、市民団体、NGOなどが一緒に協働した災害準備・計画、緊急支援における連携・協力はできているだろうか。

 特に、前述した情報・通信、ロジの分野では、官民、民民、産学などで協働できることはたくさんある。

 さらに、シェルター、水・衛生分野などでも、平時から各分野で災害対策に関わってきた、または将来的に貢献できる組織・機関などでクラスターを作り、将来の連携・協力の可能性を模索してはどうだろうか。

備えに時間と知恵を、そして行動を

 たとえば、シェルターに関して、官民連携のクラスター・アプローチはとても有用だと思う。

 東日本大震災では個人や家族のスペースやプライバシーをいかに保持し、衛生や快適さを追求し、高齢者の廃用性症候群を防ぐか、といった課題があり、様々な活動や工夫がなされた。その中で、安価で簡単に仕切りやベッドが作れる段ボールの利用が注目され(関連リンク1)、他の用途も多く検討された(関連リンク2)。

 しかし、これらの熊本地震の被災者にこれらが届いたのは発災から少し時間が経ってからであり、それも大阪府八尾市の段ボール箱メーカーや兵庫県養父市からの寄付によるものだった。

 また、シェルター活動としては、アルピニストの野口健さんが熊本県益城町に車中泊の人々の避難的措置として「テント村プロジェクト」を開始し、惜しまれながらも、気温の上昇による熱中症や梅雨による近くの川の氾濫の恐れなどから、5月31日に閉村した。車中泊によるエコノミークラス症候群は新潟県中越地震で既に得た教訓でありながら、熊本地震でも早期に組織的な対応ができず、個人がボランティアで対策を講じたわけである。

 これに対し、クラスター・アプローチを立ち上げ、平時から官民産学で連携し、役割分担をしてはどうだろう。過去の好例・教訓を持ち寄り、次の災害に向けて、具体的にどのように取り組むかを考え、有用なシェルター用品の選択からその緊急調達・備蓄などを含め、実践的な準備を行うのである。

 ほかのセクター・分野でも、是非クラスター・アプローチを試みてほしい。前述の通り、その成功の鍵はリード役、調整役である。官主導でなくともクラスター・アプローチは可能だ。官の主導を待たなくとも、民のパワーから協働を導いてもいい。

 以上、挙げた3点以外にも、今後の災害対策で改善すべきことは多くあるだろう。大切なのは、教訓をいつまでも教訓で終わらせず、いかに実践に移し、成果につなげるかである。災害多発国日本で生きる限り、将来の災害を憂うより、その備えに時間と知恵を使い、行動をした方がいい。

 熊本地震の被災地の一刻も早い復興を願いながら、そこから得た教訓をどうやって未来につなげるか、私も微力ながら今後も協力していきたい。