今後の災害対策での改善点3つ目は、連携・協力である。

 私のエッセイにも示したが、連携・協力といっても様々な形があり、レベル・段階があり、実際にはそう簡単なものではない。

連携・協力…クラスター・アプローチに活路

 誰もが連携・協力は重要とわかっていながら、緊急時に具体的にどうしたらよいかわからない。とりあえず、調整会議などを開いてみるのだが、単なる意見交換で終わったり、それぞれの言い分があってぶつかりあって結論がでなかったりする。行政の中では、国と都道府県と市町村との間で齟齬が生まれ、縦割りの組織間で物事が思うように進まないこともある。市民団体、NGOの間でも活動に重複が生まれ、調整がなかなか進まないこともある。民は官の態度に怒り、官も民に不満を言う。そんな状況を私は現場で何度も見てきた。自分を含めて、緊急時には人々は熱くなり、冷静な判断ができなくなるものなのである。

 国際的な人道支援においても、連携・協力はそう簡単なことではない。途上国政府の調整能力が低いため、国連も、NGOもばらばらに支援をし、効率や効果が損なわれることもあった。

被災者への食事配給(インド洋大津波時)

 たとえば、スマトラ沖地震とインド洋津波で甚大な被害を受けたスリランカでは、国際空港のある首都コロンボから1時間以内で行ける避難所には援助が溢れかえる一方で、6時間以上もかかるアクセスの悪い避難所への支援は希薄だった。

 そこで援助団体の間で連携・協力を強め、人道支援の効果と効率を高めるために2005年から導入されたのが「クラスター・アプローチ」である。食料、栄養、保健医療、水衛生、シェルター、通信などのクラスター(課題やセクターのようなもの)に分かれて、政府、国際機関、NGOなどが連携・協力を強化する仕組みである。私もミャンマーやソマリアなどでこのクラスター・アプローチに参画し、リード(調整)役としてまとめたこともある。

 私見として、このクラスター・アプローチから日本が学べる「連携・協力の秘訣」がいくつかあるので、その一部をご紹介したい。

  • 災害支援に必要なクラスターを予め決めておき、それぞれに必須の支援活動、連携・協力の方法を官民協働で準備・計画しておくことにより、災害支援の効果・効率は向上する。特に多くのプレイヤーがいる場合には、「広く浅い」連携・協力よりも、クラスター毎の「狭く深い」連携・協力のほうが共通の目標・戦略・活動計画を設定しやすく、実践的、実質的な協働につながる。

  • 連携・協力の鍵は調整役(コーディネーター)にある。調整役は必ずしも現場の行政担当者が担うものではなく、外部からの経験豊富な調整役だからこそ、問題を客観視して、地元にある機微な人間関係や力関係をあまり気にせず調整できることもある。調整役にはコミュニケーション能力や問題分析能力など必要な技能がある。その条件に合った適材を選抜し、さらに能力強化を行い、登録制度などを通じて現場に緊急派遣できる体制を作っておくとよい。

  • クラスターごとに設定した活動内容や目標をモニタリング・評価し、活動の進捗を測定していくことも重要である。クラスター毎に「情報ユニット」を設け、関連情報を集約・一元化することで、効率よく効果的に情報の収集・分析・報告ができる。災害時の4W、いつ(When)、誰(組織・団体)が(Who)、どこで(Where)、何を(What)するのかをクラスター毎に地図やガントチャート(Gantt Chart)などを使って見える化することで、支援の重複を避け、不足部分を迅速に埋めることができる。