日本でさらなる努力・準備が必要と思われる2点目として、支援物資の調達・輸配送・配布を含むロジスティクス(ロジ)がある。熊本地震でも発災直後の急性期、被災者のニーズに十分対応できなかったのはロジが問題だったともいわれている。

ロジスティクス…平時の訓練が必須

 ロジは災害対策の要。これまで国際緊急援助に関わってきて、経験・知識の豊かなロジスティシャンを集められるか否かが緊急援助の結果につながっていると感じていた。東日本大震災でも、私の支援チームにはアフガニスタンやソマリアなどで活躍してきた経験豊かなロジの専門家を呼び寄せた。

 ロジの基本は「必要なものを必要な場所に送り届けること」。単純に思えるが、必要なものは様々で、場所により、人により、時期により、必要なものが変わっていく。どこから調達し、どこで保管・管理し、どのように輸送・配送・配布するのか。賞味・使用期限、温度、湿度を含め、品質管理をどのように徹底するのか。ガソリンが不足する場合、道路が寸断した場合、どのようにそれを克服するのか。全国から多くの物資が集まる中で、被災地・避難所のニーズとのマッチングがうまくできず、次第に倉庫が満杯になりパニック状態になる。どうやって回避したらよいのか。これらは経験と知識に裏打ちされた専門家でないと、迅速に対応・判断・行動できない。

 緊急時にロジを効果的・効率的に動かすには、平時からの準備・計画が重要であることは言うまでもない。大規模災害を想定して、どのような物資をどれだけどこに備蓄し、どこから緊急調達し、どのような業者を使ってどこに輸送するか。被災地のどのような集積拠点からどのように避難所などへ輸配送するか。災害対策では各地域でこれらを詳細に準備する必要がある。 

 たとえば、私が赴任していたミャンマーやソマリアでは、国内や隣国の何か所かに大型倉庫などを設置し、ワクチンなどの必須医薬品や緊急時の支援物資を3か月分ほど備蓄していた。予算やスペースの関係で備蓄できない緊急物資については、予め国内外の調達先を決め、国内外の物流業者やNGOなどとも輸配送・配布を含め事前の契約(スタンバイ契約)や協定を結んでいた。

 災害・紛争時には道路が寸断、橋が崩壊、倉庫が損壊するなど様々なことが起こる。輸送手段はトラックのみならずセスナ、ヘリコプターから船・小舟、牛車、ロバまでを想定し、倉庫も小規模のテントからバスも入るような大型の可動式倉庫まで、様々なオプションを用意した。

 ちなみに、東日本大震災では途上国で頻繁に活用している大型の可動式倉庫が寄付され、被災地でとても有用だったが、日本ではその存在を知る人も少なく、設営できる人もいなかった。他にも、海外の災害現場で頻繁に使用されながら、日本では知られていない、利用されていないものは多くある。逆に、日本にも優れた災害用品があり、海外で私も活用したいと思うものも多い。

 専門家や経験者がいてもロジが難しい点は需給のマッチングにある。ロジには大きく分けてプル型とプッシュ型があり、現場の需要に応じて必要な物を流していくプル型物流にしたいと思いながらも、途上国では、また緊急時には正確に迅速に現場のニーズを把握できないため、供給側が必要な物資とその量を推測して物資を調達して送るプッシュ型物流が主流にならざるを得ない。

 日本の場合、調達・提供する主体は国、都道府県、市町村、民間事業者、さらに市民組織、NGO、個人など多岐に渡り、都道府県の一次集積所のみならず、市町村の二次集積所や避難所へ直接輸配送されることもあるため、予め計画していても現実には複雑となる。

 発災直後では情報も限られる上、集積所も混乱するため、避難所で支援物資が不足し、逆に過剰となるミスマッチが起こるのはある程度仕方がない。重要なのは、そのミスマッチをいかに迅速に解消するか、その後の修正・調整の仕方である。そのためには、物流のどこに律速段階やボトルネックがあるかを早期に診断し、それを修正・調整するオプションを予め用意しておくことである。

 ボトルネックを生じるひとつの理由が、一次集積所、二次集積所でロジの専門家でもない慣れない行政の担当者がロジの責任を抱えていることである。大規模災害において官民連携は必須であり、被災した地方自治体だけで対応しようとすると、そのスピードや量、質に制限がかかることが多い。平時から、また発災直後から、いかに民の力、専門家の力を活用し、できるものはアウトソーシングするかを考え、具体的な準備につなげる必要がある。

 ただし、数百か所にもわたる避難所すべてにロジの専門家を派遣するのは困難である。大規模避難所には優先的にロジの経験者・専門家を配置し、その他の避難所にはマニュアルを用意し、平時からロジに活用できる人材を訓練しておくなどの方策が必要である。

 災害時によく問題になるのが、「ありがた迷惑」の物資支援である。私もこれまで様々な被災地で、汚い古着や靴、使い古しの毛布、粉ミルク、一般用医薬品、賞味期限の切れた食料品などが送られ、倉庫いっぱいに積まれて処理に困っている光景をみた。時に千羽鶴や寄せ書きなどもある。

 これらが善意からくるのはわかるが、原則として、発災後の急性期に個人がばらばらにこのような物資を被災地に送ることは禁忌である、食料も十分に届かず、集積地がパニックになっているときに、このような「善意の品」を仕分けするだけでも大変で、使えないものを処分するだけでも、時間と労力と資金がかかってしまう。限られた集積地のスペースが他の必須の支援物資のために使えなくなることもある。