「21世紀型パートナーシップ」と呼ばれるゆえんは、他にもある。
低中所得国では、海外から資金が注入されるとその分野に対する自己努力を怠りがちである。いわゆる「援助漬け」「援助依存」にならぬよう、早期に「援助からの卒業」「自立発展」のための未来図を描かなければならない。援助の最終目標は、すべての国が自立して援助の必要のない社会を作ることだからだ。
そのためにも、感染症対策に要する資金をすべて援助で賄うのではなく、可能な限り自国の保健医療予算を捻出してもらうことが必要だ。多くの低中所得国では、国家予算がなかなか保健医療に割り当てられない。人々の健康は国の礎でありながら、国家予算として年間一人当たり100円の保健医療費も出していない国もあるのが実情である。
「見返り資金」で予算を捻出
これに対して、2001年ナイジェリアで開かれたアフリカ連合国際会議で、国家予算の少なくとも15%は保健医療に割り当てるべきとアフリカ諸国自体がその努力目標を設定した(アブジャ宣言)。が、なかなかそれを達成する国が出てこない。政治的には保健セクター以外の優先課題が多く、保健省は望んでも、財務省が金を出さないことも少なくないのである。
そこで、グローバルファンドが作ったメカニズムが「見返り資金(Counterpart financing)」である。グローバルファンドと現地政府がWIN-WIN関係のパートナーシップを構築するため、グローバルファンドがその国に資金を拠出する条件として、国の経済状況(国民一人当たりGNI)に応じて、拠出額の5~60%を保健医療予算として捻出させるのである。
たとえば、アフガニスタンのような最貧国であっても、グローバルファンドがマラリア対策に2000万ドルの資金拠出をする条件として、現地政府に最低5%、すなわち100万ドルを感染症対策を含む保健医療予算として捻出することを約束させる。ボツワナのような上位中所得国では、少なくとも60%、すなわちグローバルファンドが2000万ドル拠出したら、政府に1200万ドル分の保健医療費を約束してもらう。
このようなメカニズムを嫌がる現地政府も多いのは事実だが、長期的に見ると自立に向けた現地政府の意識が変わり、自国のプログラムに対するオーナーシップも高まる。国は貧乏で金がない。しかし、なけなしの金を自国民の健康のために捻出すると、それを効果的・効率的に使おうとする。工夫しながら、自分たちでどうにかしないといけないとの当事者意識も高まってくるのだ。
グローバルファンドは官民パートナーシップの先駆けともいわれている。様々な民間セクターとパートナーシップを組んでいるが、その目的・方法は多種多様である。
たとえば、ビルとメリンダ・ゲイツ夫妻が創設したビル&メリンダ・ゲイツ財団 (Bill & Melinda Gates Foundation; BMGF) 。グローバルファンドへの寄付は総額11億ドルを超え、先進国の拠出額に比べても遜色ない。
しかし、単なる寄付に留まらず、ゲイツ氏自体が先進国や途上国の大富豪に呼びかけてグローバルファンドの資金調達を支援している。ゲイツ財団にはグローバルファンドを超える人数のスタッフがいるのだが、グローバルファンドの理事会や各種委員会に参加して、運営や戦略作りにも貢献している。
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