グローバルファンドでも、パートナーシップを通じて達成すべきビジョン、ミッション、長期目標と共に、戦略、ターゲット、行動計画などがパートナーと議論しながら設定されている。

 2012~16年の5カ年戦略では、この5年間に世界で1000万人の命を救い、1.4億人の感染を防ぐという具体的なターゲットを設定し、それを達成するための具体的な戦略、詳細な行動計画や年次計画を作っている。

じれったいプロセスの先にこそ

 これらの中から重要なパフォーマンス指標(Key performance Indicators:KPI)を選び、目標に向かってうまく進捗しているのか、戦略は適切に実施されているのか、計画は予定通り進んでいるのか、などをチェックし、定期的に理事会に報告していく。

 このような目標やターゲット、KPIを設定する際に我々が重視しているのが「SMART」である。S(Specific:明確)、M(Measurable:測定可能)、A(Achievable:達成可能)、R(Relevant:妥当)、T(Time-bound:期限付き)の略である。

 たとえば、5年間で1000万人の命を救う、1.4億人の感染を防ぐといった指標もこの5つの基準を考慮して設定している。専門的なことをいうと、実は多くの指標は量的な測定が難しいのも事実である。100カ国以上の低中所得国を支援していると、信頼できるデータを集めるのが至難の業という国も多い。そこで数理モデルを使ったり、数年に一度国家レベルの大規模な調査をしたり、国の保健医療データシステムを強化したりという努力が必要である。

 また、目標を設定する時、野心的に高い目標を設定したがるパートナーもいる。多くのパートナーが達成可能と思える目標を設定するのか、達成は難しいかもしれないが高い目標を設定してパートナー全体を鼓舞してさらなる努力をさせるか、意見が分かれる時がある。先進国ドナー、現地政府、国連、NGO、当事者など様々なパートナーが集まって議論するので、それぞれの立場から異なった意見が出る。同意できる方向性を見つけるのに時間がかかることも少なくない。

 しかし、世界中から異なる価値観、文化、考え方、役割を持つ人々が集まり、パートナーシップを構成しようとする場合、このような議論のプロセスが実はとても重要、いや必須なのである。感情論でなく、感情抜きで議論を戦わせ、お互いの主張を尊重し理解しようと努力し、最終的な落としどころをみんなで探っていく。多数決は時間を十分にかけても合意できない時の最終手段で、できるだけ話し合いで方向性を見つけていく。根回し、上意下達の文化を持つ日本人にはその議論の実践は難しいかもしれない。実際、私自身もその議論に参加しながら「じれったい」と思うことも多い。が、その議論やプロセスを通じて、パートナーがお互いに対する理解を深め、合意した内容にはみんなで責任をもち支援していくのをみると、なるほど議論の結果だけでなく、そのプロセスが重要なんだな、と感じる。