HIVの広がりとともに、古くからの病気である結核も息を吹き返した。HIVの最も大きな人体への影響は免疫力低下であるため、死亡原因の多くは感染症、その第1位は結核であった。結核は、現在でも世界で最も多くの人々が感染している病気ともいわれるが、HIVの流行はさらにその威力を強め、新規感染や死亡を増やしていった。

 さらに、地球温暖化の影響か、グローバル化、難民などの人の移動によるものか、マラリアも様々な地域で再流行し、多くの母子の命を奪っていった。

パンデミックの緊急事態と戦う国際機関を

 このような背景の中、国連安全保障理事会において、HIVが保健医療問題として初めて議題にあがったのが2000年。同年の国連ミレニアムサミットでも、HIVをはじめとする感染症の脅威への対応が世界の貧困削減を目指すための8つの開発目標のひとつとなった。

 2000年7月に日本で開催された九州沖縄G8サミットでも、先進国首脳会議として初めて、保健医療問題が主要議題にあがる。感染症のパンデミック(世界的大流行)と戦うためには、多くの資源を動員し新たなパートナーシップを構築する必要性が議論され、同意されたのである。

 そうして誕生したのが、グローバルファンド。正式名称は、Global Fund to fight AIDS, Tuberculosis and Malariaと長い名前だが、「fight」という単語を入れて、明確に戦う姿勢を打ち出した。提唱されてわずか1年半、という短い期間で新たな国際機関が誕生するのは異例のことで、問題の緊急性、重要性がみてとれる。

 では、なぜここで新たな国際機関を創ることが必要だったのか。保健医療問題を扱う国際機関には、世界保健機関(WHO)やユニセフ(UNICEF)などがあり、エイズ対策であれば国連合同エイズ計画(UNAIDS)がある。なぜそれらの国際機関に委託しなかったのだろう。

 さまざまな議論があったようだが、結論から言えば、三大感染症のパンデミックという緊急事態を救うには、相当額の資金を迅速に集め、効率的に必要な国・地域に配分し、効果的に現地で対策を実施しなければならない。それには、先進国政府、途上国政府、国連・国際機関、NGO、民間セクター、当事者組織などが「本当の意味で」連携・協働しなければならない。既存の機関・組織でそれができるのか?

 先進国ドナーや市民社会などが出した答えは「ノー」であった。当時のコフィー・アナン国連事務総長も、世界に基金の創設を呼びかけ、それに自らの私財も投じたが、その管理運営を迅速かつ柔軟にするため、国連システム外への設置を支持した。既存の組織や努力ではできなかった新たなメカニズム、「21世紀型パートナーシップ」とでも呼ぶべきものを作る必要があったのである。