1990年から2000年までの進捗状況をみると到底達成できない。ではいかにして世界の努力で加速化し、達成させることができるのか。

 ワシントンDC、オタワ、ジュネーブなど様々な場所に呼ばれ、アメリカ、イギリスなどの先進国政府、途上国政府、WHO、UNICEFなどの国連・国際機関、さらに市民社会、財団、民間企業などと一緒に議論を重ねた。

ヒト・カネ・モノ・データを集め、生かす仕組みを

 MDGs達成、またその加速化に向けて必要なのがヒト・カネ・モノ・データ。それをいかに集め、現場の状況を変えるために活用するか。そのために政府、国際機関、市民社会がどのような役割を果たし、いかに連携・協力するか。議論でなく、いかに具体的な行動に移すか。そんなことが議論の中心であり、私としてもMDGs達成のために日本として何ができるのか、何をすべきなのかを模索しながら、意見を戦わせ、日本国内での調整やアクションにつなげた。

 まずは資金がなければ何も始まらない。途上国で基本的な保健医療サービスを提供するのに、当時の試算で一人当たり最低約4000円は必要である。人口1000万人の国であれば単純計算で約400億円の保健医療予算であるが、世界には一人当たり100円の予算も捻出できない後発国もある。保健医療MDGsを達成するには、国際社会がより多くの援助資金を提供し、かつ新たな資金を生み出すメカニズムを作らなければならなかった。

 これに対して、先進国政府は本気で取り組んだ。特に米国政府は、2000年に26億ドルだった開発途上国への保健医療援助を2010年には117億ドルと4倍以上に増やし、さらに英国政府も11億ドルから26億ドルと2倍以上に増加させた。

 一方、日本は1991年から2000年まで世界最大のODA拠出国であったが、日本経済の停滞でODA総額は減少していた。それでも、2000年7月のG8九州沖縄サミットでは、世界の感染症対策に貢献するため、5年間で総額30億ドルを目途とする国際貢献を誓約し、現実には5年間でその額は58億ドルに達した。その結果、保健医療分野での援助としては、年間9.6億ドル(2000年)から16%増の11.2億ドル(2010年)となった。

 現在、開発途上国に対する保健医療援助の約7割は先進国政府からの支援であるが、2000-2010年にかけて財団や民間企業からの支援も増えた。特に、1999年に設立されたビル&メリンダ・ゲイツ財団(Bill & Melinda Gates Foundation: BMGF)は、保健医療援助として、2000年に5.3億ドル、そして2010年には約4倍の19億ドルを提供し、多くの先進国政府の援助額をも上回っていった。

 これらの様々な努力の結果、2010年の開発途上国に対する保健医療分野の援助総額は343億ドルに達し、2000年、1990年と比較して、それぞれ3倍、5倍の増加となった。

 こうなると、ドナーが資金拠出を増やすだけでなく、それらの資金を迅速、効率的、効果的に活用し、現場でのインパクトをもたらすためのメカニズムが必要となった。

 そこで設置されたのが、グローバルファンドや米国大統領エイズ救済緊急計画(President's Emergency Program for AIDS Relief: PEPFAR)、Gavi(The Vaccine Alliance、ワクチンと予防接種のための世界同盟)などの新たな組織やメカニズムで、総称してグローバル・ヘルス・イニシアティブ(Global Health Initiative: GHI)と呼ばれた。これらを通じて、資金調達のみならず、現場に資金が迅速に流れ、必須サービスが開発途上国で急速に広がっていった。

 さらに市民社会、NGOの役割が高まり、参画が増えていった。政府や国際機関だけではMDGsを達成することは不可能であり、各国でのMDGs達成に向けた計画や実施にいかに市民社会やNGOの力を活用し、さらにその力を強めていくかが議論された。これらあらゆるパートナーの援助、そして各国の自助努力により、世界の保健医療状況は目覚ましく改善した。

幼児死亡率、妊婦死亡、栄養不良の割合が半減

 世界における5歳未満の幼児死亡率は、1990年から2015年の間に生まれた1000人あたり90人から43人へと半分以下に減少し、妊産婦死亡割合は1990年から2015年の間で45%減少し、特に2000年以降で加速的に減少した。

 HIVへの新たな感染は2000年から2013年の間で約40%低下し、感染者数も約350万人から210万人へ減少した。2000年から2015年の間に、620万人以上の人々がマラリアによる死を免れ、その多くがサハラ以南のアフリカに住む5歳未満の子どもたちであった。2000年から2013年の間に、結核の予防、診断、治療も拡大し、それによって約3700万人の命が救われたといわれる。

 全体として、世界共通の開発目標として設定したMDGsは、国際社会が真剣に取り組み、多くの国・地域で達成されたといえる。

(MDGsの成果の詳細はこちら