それから半年。記者は久しぶりに連絡をとったブリヂストン社員から思いがけないお誘いをいただいた。「東京公演があるんです。聴きに来ませんか」。ブリヂストン吹奏楽団久留米が、創立60年の記念コンサートを開くのだという。「ぜひお邪魔させてください」。即答した。

ホールの外には、これまでに表彰された賞状の数々が並んだ(2016年11月21日、東京芸術劇場)

 記者は11月21日夜、池袋にある東京芸術劇場に足を運んだ。個人的に何度も訪れたことのある会場だが、ホールに向かうエスカレーターはいつも以上にお客であふれ、楽団の人気ぶりがうかがえる。部活動帰りなのだろう、ホルンやクラリネットのケースを抱えた中高生の姿も多く見かけた。

 そもそも、ブリヂストン吹奏楽団久留米はどんな楽団なのだろう。席に座り、プログラムを開く。いわく「創業者の石橋正二郎が呼びかけ、1955年に創業の地である福岡県久留米市で結成した」。石橋氏は当時、体育館やプール、美術館などを備えた石橋文化センターをつくり、同市に寄贈している。吹奏楽団の結成には、こうした「ハコモノ」だけではなく、ソフト面でも社会貢献する狙いがあった。

 現在の団員は55人。活動の大きな柱は、地元で開く定期演奏会だ。創立当初は入場無料だったが、福岡県内のプロの楽団から「営業妨害だ」と注文がつき、いまは前売りで500円ほどのチケットを売っている。このほか病院でのボランティア演奏や中高生向けの楽器指導など、社外向けの演奏活動は多岐にわたる。楽団は、ブリヂストンの地域貢献の象徴ともいえる存在になっている。

「タイヤ製造に携わる従業員で構成」

 そうこうしているうちに公演が始まった――。と、吹奏楽オタクとしては演奏について熱く語りたいところだが、ここは「日経ビジネスオンライン」なので詳細は省く。いずれにしても第1部のクラシックステージから第2部のマーチング・ステージショー、第3部のポップス・ステージまで、ブラスバンドらしい音圧に圧倒された。「さすがブリヂストン」と唸らずにはいられない、かつて記者が憧れた通りの素晴らしい演奏だった。

 その演奏中、何気なく読んでいたプログラムに、記者は気になる一文を見つけていた。「当団は、ブリヂストンの久留米工場と鳥栖工場のタイヤ製造に携わる従業員で構成されています」