国民性とアラブ国家の摩擦がハードルに

 イスラエル、天才を生み出す「3つの秘密」でも伝えたとおり、ユダヤ人の個性を端的に表す「フツパー」という言葉がある。確立された日本語訳はないが、概ね「地位に関係なく直言する人」といった意味合いだ。現地の日本人駐在者に言わせれば「『KY』が最も適した訳」だそうだ。日本メーカー社長も「まるで俺を社長だと知らないような物言いなんだ」と嘆息する。例えイスラエルの技術に惚れ込んで日本企業が提携を結んでも、両者の国民性の違いが壁になる。

 そして、パレスチナ問題に代表されるアラブ国家との摩擦。提携に踏み切る以前にイスラエル自体に対して「めんどくさい」と思わせてしまうアレルギーの要因になっている。日本とイスラエルの2カ国間ビジネスを手掛けるユダヤ人は「イスラエルの技術を紹介する際に、戦争で培われた技術だろうという評価がついて回る」と話す。

隠れイスラエル駐在企業も?

 政治的にも民族的にも極めて深刻な問題に対して敢えて「めんどくさい」と不謹慎な表現をするのは、必ずしも軍事技術への深刻な嫌悪感を持つ会社ばかりではないのではないか、という疑念が記者にあるからだ。イスラエルに駐在する日本人ビジネスマンが「看板を掲げずにイスラエルに駐在員を置いている日本企業もある」と指摘するように、レピュテーションリスクが忌避感の大きな要因と思われる。

 昨年の安倍晋三首相のイスラエル訪問後、インクレディビルドが利用したような補助金制度や人材交流事業が次々に立ち上がっている。しかし、外堀は埋まっていても踏み切る日本企業はまだ多くない。

 2つのリスクを御する方法を日本企業は見出せていない。というより、そもそもリスクを消し去る妙手なんてないのかもしれない。上述の日本メーカー社長は「イスラエル企業とうまくやるコツは我慢することに尽きる。我慢さえすれば、ものすごいモノが出てくるんだから」と話す。

 2カ国間のビジネスに携わる多くの関係者の解答も皆一様にシンプルだ。ある大手企業のベンチャー投資担当者は「当面の目標はトップをイスラエルに連れて行くこと。行けばすぐにでも提携を決めたい企業がたくさんみつかる」と話す。実際に行かなければ分からない。当たり前すぎる解答なのだが、いまだその当たり前から始めなければならないのが、2カ国関係の現在位置なのかもしれない。