管理に関する都条例、2020年にも施行

 結局、問題の解決の鍵を握るのは管理組合であり、住民一人ひとりだ。しかし業界関係者は一様にマンション住民の参加意識の低さを問題視する。マンションやそのマンションを含む街づくりについて話し合ったり、悩みを相談し合ったりする団体「江東・マンションふぉーらむ21」の小林正博会長は「自分たちの住まいにきちんと関心を持つ管理組合が機能しているマンションがある一方で、そうした意識が低いマンションも相当数ある」と話す。須藤社長も「管理組合の理事になっても、任期中はじっとおとなしくしている人が多い」と指摘。この状況が、管理会社や工事会社にとっては好都合であることは言うまでもない。

 マンション管理を巡るトラブルの増加を受けて、行政も動き出した。東京都は識者を集めて「マンションの適正管理促進に関する検討会」の実施を2018年春から重ね、11月末に最終案を受け取った。現在はマンションの管理状況についての届け出制度の条例化を検討中だ。東京都の都市整備局の担当者は「マンションは私有財産だが、都市や地域社会を構成する重要な要素でもある。マンションの管理状況の届出を義務化して管理不全に陥る事態を防ぐのが条例化の狙いだが、自分が住むマンションに対する住民の意識向上も期待している」と話す。条例化の審議は2019年の都議会で始まり、順調に進めば早くて2020年に施行されると見られる。実現すれば、都道府県レベルでは全国初の取り組みだ。

 仕事やプライベートで忙しい中、マンションの管理組合活動に時間や労力を割くのは確かに面倒だ。しかし動かなければ、10年後、20年後に困るのは自分であることを忘れてはいけないだろう。小林会長は、「1回目の大規模修繕工事では住民が無関心だったので費用がかさんだが、工事が終わった後に『もっと安く抑えることもできた』と知って後悔し、2回目の大規模修繕工事に備えて頑張って勉強している管理組合もある」と話す。

 現代は様々な情報がインターネットで容易に入手でき、知識を深められる。情報の非対称性を利用した業者のやり方を批判したり嘆いたりすることだけが、果たして賢明か。ましてや対象は大金を投じて購入した大切な我が家だ。アクションを起こさなければ、「損」を生み出す状況は何も変わらないはずだ。

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