贔屓目に見ても、例えば郵政グループに住宅ローンを収益化する能力はない。ただでさえメガバンクから地方銀行まで巻き込んだ金利引き下げ競争が起きている。「住宅ローンに投資信託や生命保険の販売を組み合わせることで、ようやく黒字化する水準」(メガバンク支店長)。そんな中に飛び込めば、低金利を加速させ、ゆうちょ銀の収益に貢献しないばかりか、市場そのものに悪影響を与えかねない。本来なら政治は、膨張しようとする郵政グループの無駄を指摘する役割を担うべきだと思うが、選挙の勝敗に直結するこの会社に、耳の痛い指摘は届かない。

「みまもりサービス」が示す限界

 こうした認識の間違いに「ユニバーサルサービス」が絡むため、話が一層ややこしくなる。「全国一律の郵便・金融サービスを義務付けられている」という法律の縛りは、郵政グループ内で「公共性があるのだから、収益性には目をつぶってもいい」と安易に変換されがちだ。

 2013年から試行してきた「郵便局のみまもりサービス」はその典型例に思える。iPadなどを使い、郵便局員が過疎地などの高齢者をサポートするというビジネスだ。郵政グループは今秋の経営会議や取締役会を経て、早ければ年度内をメドとする本格実施を決めたが、「これまでの検証結果が十分に議論されないまま、特定の意見に押し切られた」(関係者)。一方、民間企業出身の取締役からは、収益性を懸念する反対意見が多く出たという。現場からは「試行段階ですら思ったような数の契約が取れていない。そもそも郵便局のマンパワーが圧倒的に不足している」(中堅職員)との声も上がる。

 郵政グループは、2007年の発足以降、一度も最終赤字に転落したことがない。リーマンショックによる金融危機も、東日本大震災も、最終黒字で乗り越えてきた。収益向上に直結しない政治発の施策を吸収し続けられる余裕は、こうした過去の“実績”から生まれる。民間企業なら意識せざるを得ない「倒産への危機感」を醸成するには、一度赤字に転落して、その恐ろしさを痛感するしかないだろう。

 折しも年賀状の季節がきた。2017年用の当初発行枚数は30億枚を割り込み、約28億5000万枚となっている。日本郵便一つとっても、年賀状の売り上げで1年間の帳尻を合わせる、という収益構造がすでに崩壊しつつある。

 内輪の論理に拘泥していられる時間は、残り少ないように見えるのだが。