「ジョブズ氏はオフィスの設計にこだわった」

 日本にも面白いオフィスがある。9月に東京ガーデンテラス紀尾井町(東京都千代田区)に移転したヤフーだ。

 移転前から川邊健太郎副社長が「引っ越し隊長」に就任し、カルビーやピクシブ(東京都渋谷区)など様々なオフィスを研究した。

 同社のエンジニアの中には、出社しなくてもできる仕事はあるだろう。しかし、会社に来た方がもっといい仕事ができるかもしれない。

 川邊副社長は、「人と情報が集まり、イノベーションを起こせるから会社に行くというように仕向けたい」と語る。

 出社を促す仕掛けとして、快適なオフィス環境に加えて、新幹線通勤への補助(月額15万円が上限)や食堂の充実などを実施している。

健康に配慮した料理メニューを充実させている
健康に配慮した料理メニューを充実させている

 社員同士のコミュニケーションを活性化させる上でのキーワードは「摩擦」だ。

 例えば、形の異なる机を用いたり、配置をジグザグにしたりして、社員がまっすぐ歩きづらくしている。オフィス内を迂回し、ゆっくり歩かせることで、社員同士のコミュニケーションを促している。

 川邊副社長は米アップル創業者のスティーブ・ジョブズを引き合いに出し、摩擦の重要性を語る。「ジョブズが最後にこだわったのは、オフィスの設計だと聞いている。キーパーソンをトイレの近くの席に座らせ、多くの社員とコミュニケーションをとるように仕向けた」。

 コミュニケーションの範囲は社外にも広がる。17階にはコーワーキングスペースを作り、社外の人が自由に使えるようにした。

ヤフーのオフィスはまっすぐ歩きづらく、コミュニケーションを取るように仕向けている
ヤフーのオフィスはまっすぐ歩きづらく、コミュニケーションを取るように仕向けている

出社したくなるオフィスか

 働き方改革の中で、急速に在宅勤務などを導入していく企業が増えている。厳密に出社の意義を問い始めたら、在宅勤務で済む仕事が急増するかもしれない。

 しかし、社員同士でコミュニケーションをとった方が、アイデアを生み出す局面は多い。そのためには、社員を義務的な動機ではなく、自発的に出社させるように仕向けなければならない。

 エアビーやヤフーのオフィスを見ていると、少し遊び心がある空間の方が、社員は集まるのかもしれない、と思った。

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