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 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏が逮捕されてから、そろそろ1カ月になる。捜査当局が主張する虚偽記載は本当にあったのか。日産と仏ルノー、そしてフランス政府の関係は今後どう変わるのか。歴史に残る大事件だけに様々な観点から論じられているが、いろいろと調べるなかで、記者も個人的に驚いたことがあった。

 それはルノーが公表している「Registration Document 2017」。日本では2017会計年度の有価証券報告書にあたる書類だ。思わず「これはすごいな」と呟いてしまったのは、役員報酬の決め方についての説明だけで実に28ページという分量が割かれていたからだ。ちなみに日産の有報にある「役員の報酬等」の記述は1ページ未満。一体なにが違うのか。どんなことが書いてあるのか。

ルノーの有価証券報告書のうち、役員報酬の決め方について書かれたページ。本記事の執筆にあたっては、金融庁の「EDINET」に開示された日本語訳も参考にした。
日産の有価証券報告書では、役員報酬の決め方についての記載は1ページ未満。ルノーと比べると、その差は歴然としている

 「CEO(最高経営責任者)の報酬方針は、以下の通り簡素で一貫した、透明性のある6つのプラクティスに基づいています」。ブルーと黒の2色印刷で、さすがフランスらしい、なんとなくオシャレなルノー有報。役員報酬についての説明はページ番号282の中程にある、こんな記述から始まる。ここでいうプラクティスとは、日本語に意訳するならば「基本方針」といったところだろうか。

 たとえば6つのうち「2.業績本位である」の項なら「業績が基準を下回った場合には、変動報酬は付与されない」。「3.長期的業績の重視」なら「CEOの報酬のほとんどは、複数年度にわたる目標の達成に左右される」と書いてある。まずは細かい話というより、報酬を決めるにあたっての全体的な考え方が示されている。

 興味深いのは「5.競争力ある報酬」の項。まず「自動車市場には、会社役員をめぐる激しい競争がある」と述べたうえで、「したがってCEOの全体的な報酬を(中略)世界の自動車関連企業と比べて競争力あるものとするように確保することは、最も重要である」とある。株主が「これは高額だなあ」と思ったとしても、業界特有の事情で仕方がない、と納得してもらうためだろうか。

 逆に、「当社が従わないプラクティス」というのも明記されている。