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ロジックがあれば、話は通じる

 一方、イスラエル人は「ロジックがあれば、話は通じる」「飲みに行くと、すごく人がよくなる」というのも平戸氏と石森氏2人の共通の見解だ。つまり、つっけんどんな物言いもあくまで理を尽くすから。相手を攻撃する意図はない。

「イスラエル人にも飲みニケーションは有効」と石森氏(左奥)

 ロジックで説明すると話が通じる一例として、平戸氏はマルコ氏に根回しの重要性を教え込むことに成功したそうだ。「御側御用取次(将軍の側近職)といった江戸時代の官僚機構や、下手な諌言が失脚につながることなど、歴史を踏まえながら根回しの重要性を説いた」と平戸氏。すると、マルコ氏はバイバーで新たなプロジェクトを立ち上げるときなどに「ネマワシだ。三木谷さん(楽天の三木谷浩史会長兼社長)にネマワシしてこい」と部下に号令を出し、三木谷氏の社内での人間関係の把握に躍起になったという。

 想像するに口元が緩んでしまうエピソードだが、海外とのコミュニケーションの第一歩が、相手に理解してもらえるほど自国の文化を深く理解することにあるのだと改めて感じた。

 デロイトトーマツコンサルティングは今春、経団連の加盟企業に対する意識調査を実施。海外企業へのM&Aを成功したと考える企業が37%にとどまるとの結果を発表した。各プロセスでの評価を見ると、「うまくできた」という評価の割合が最も小さいのがPMI(経営統合)で、11%にとどまった。

 この結果を見てふと思う。海外とのM&Aに失敗したと感じる企業は、根回しや忖度、詫び寂びなど日本独自の文化、あるいは自社の企業文化について、相手企業の社員も納得できるほど、その背景まで深く理解していたのだろうかと。「フツパーには何を言っても通じない」と最初の一歩で諦めていては、何も始まらない。逆に、酒杯を傾けながら腹を割って話す場があれば、彼らのフツパーたる理由も、意外と日本人が腹落ちするものなのかもしれない。