全2287文字

 2人が語ってくれたフツパー体験は驚きの連続。非常に興味深く、ここでいくつか紹介しよう。

基本合意後に「アーンアウト」提案

 石森氏によると、アドイノベーションを買収したイスラエルのタプティカインターナショナルは、買収の基本合意書を締結後、「一定の業績を上げた後に初めて買収資金を支払う」という条件を追加するよう提案してきたという。いわゆる「アーンアウト条項」だ。最近では、仮想通貨の流出事件に見舞われたコインチェック(東京・渋谷)が、マネックスグループに買収された際に使われた。「普通、基本合意を結んだ後は何も問題がなければそのままクローズするでしょう? VC(ベンチャーキャピタル)も既存株主も全部回って話が通っているのにガラガラポン。当然株主は怒り出すし、うちの管理部は疲弊しましたね」と石森氏は苦笑する。

 一方の平戸氏は前職の楽天時代、海外での新規事業のM&Aを担当。特に思い出深いのが、2014年にメッセージアプリを手がけるバイバーメディアの買収を担当したことだという。

 例えば、デューデリジェンス(資産査定)のために楽天、バイバーの担当者が英国に集まったとき。あらかじめ設定した1週間の査定期間が終わるのを待たず、バイバー創業者のイスラエル人、タルモン・マルコ氏は3日で帰国したという。後日事情を聞いた平戸氏に対し、マルコ氏は悪びれた様子もないまま「言いたいことは3日で全て言った。あとはそちらが買うか買わないか決めてくれればいい」。買収後も、楽天との会議でバイバーの面々は「発言がない取締役に平気で出ていけと言っていた」など、平戸氏は度々胃をキリキリと痛めることになった。