藻の一種であり、健康食品や化粧品などに利用されるミドリムシ。今度はこのミドリムシを使って飛行機を飛ばそうという計画が進められている。バイオベンチャーのユーグレナが横浜市内で建設していたバイオ燃料を精製する実証プラントが完成。10月31日に竣工を迎えた。プラントは来春から本格稼働の予定で、東京五輪・パラリンピックが開催される2020年までに国産バイオ燃料での有償飛行を目指す。

 ミドリムシは光合成により空気中の二酸化炭素を吸収するため、それを使ったバイオ燃料は石油などの化石燃料に比べ、全体の二酸化炭素排出量を抑えることができる。ただ一方で、現状では価格の高さがネックになるなど課題も残り、本格的な普及には至らないのではといった見方もある。バイオ燃料はビジネスとしての勝算があるのか。ユーグレナの永田暁彦副社長に話を聞いた。

ミドリムシを燃料に使うという構想はいつ頃からあったのですか。

永田暁彦副社長(以下、永田氏):当社が2005年に創業してから13年経ちました。創業時から掲げてきた戦略が「5F」。ミドリムシを食料(Food)、繊維(Fiber)、飼料(Feed)、肥料(Fertilizer)、燃料(Fuel)の5つの事業に展開していくというもので、燃料事業も初めから視野に入れていました。米はご飯にしたりお酒にしたり、色々な使い方ができますよね。ミドリムシも同じように何にでも使えます。ただ、研究開発が進まないとコストを下げられないので、食品など付加価値の高いものから商品化・販売してきました。

 今回の燃料事業は、5つの中でも一番コストを抑える必要があります。そのため当社が食品事業で注目され始めた頃から燃料事業も同時並行で動いていて、ANAなどパートナーとの提携も進めてきました。

バイオ燃料にはどんな特徴がありますか。

<span class="fontBold">永田暁彦(ながた・あきひこ)氏</span><br> 2007年慶応義塾大学商学部を卒業。同年ベンチャーキャピタルのインスパイアに入社。08年ユーグレナの社外取締役に就任。10年に取締役事業戦略部長としてユーグレナに完全移籍。18年から現職。
永田暁彦(ながた・あきひこ)氏
2007年慶応義塾大学商学部を卒業。同年ベンチャーキャピタルのインスパイアに入社。08年ユーグレナの社外取締役に就任。10年に取締役事業戦略部長としてユーグレナに完全移籍。18年から現職。

永田氏:一番重要なのは、物性的に既存の燃料と何も変わらないという点です。飛行機はもちろん、貯蔵しておくタンクなどの設備も全てこれまでと同じものが使えます。これは大きなメリットです。もう一つの特徴は、二酸化炭素排出量を抑えられること。石油などの化石燃料は燃やして使えば二酸化炭素が増える一方です。しかし私たちがバイオ燃料に使うミドリムシは、空気中の二酸化炭素を吸収して生産されるので、結果的に全体の二酸化炭素排出量を抑えることができます。

ミドリムシを使った燃料が従来の燃料と同等の価格で生産できるようになったのですか。

永田氏:それにはもう少し時間がかかります。今回の実証プラントでは、ミドリムシと飲食店などから出る廃食油を混ぜて作ります。まだミドリムシの生産コストが十分下がっていないからです。実証プラントの数年後に予定している商業プラントが稼働するまでに価格をさらに下げていく計画です。今回まだコストが高いのは、実証プラントだからです。