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 東南アジアでは、日本の商品を並べ、日本的な売り場を作ってローカルの競合と差別化を図る日系小売り店の戦略が、百貨店を中心に行き詰まっている。現地消費者の心をつかめないのはなぜだろうか。

 11月13日、東急百貨店はタイの首都バンコクにある2つの店舗のうちの一つ、「東急百貨店 パラダイスパーク店」を来年1月にも閉店すると発表した。既に店内は開店休業状態でフロアに人気はなく、日用品や調理器具、お菓子など日本の製品が投げ売りされていた。

閉店が決まったバンコクにある「東急百貨店 パラダイスパーク店」の売り場では、日本からの輸入商品が在庫処分されていた。

 なぜ店舗は閉鎖に追い込まれたのか。売り場のある担当者はこう話す。「日本の商品を多く取りそろえていたが、価格が高くて思うように売れていなかった。結局、お客はなじみのある商品や手ごろな商品にあふれる近隣の競合ショッピングセンターに流れてしまった」。

 日本の商品を多く取りそろえ、日本的な売り場を作ってローカルの競合と差別化を図る。こうした日系百貨店がそろって取る戦略が行き詰まっているのはタイだけではない。

 マレーシアの首都、クアラルンプールでは「本物の日本を伝える」をコンセプトにした三越伊勢丹ホールディングスの「イセタン ザ・ジャパンストア」が苦戦している。日本の美意識を強く反映したフロアを売りにしているが販売不振に苦しんできた。近隣にある巨大ショッピングモール「パビリオン・クアラルンプール」がいつも多くのお客でごったがえしているのとは対照的だ。

 パビリオンの施設内には「Tokyo(東京)ストリート」と呼ばれる一角がある。各テナントの外装にはいかにも日本らしい竹や木材が使われ、店先にはちょうちんやさくらの造花があしらわれている。皮肉なことに、こちらの方が本場からやって来た百貨店の売り場よりも、現地の消費者に分かりやすく「日本」を感じさせることに成功している。

 東南アジアでは「日本流」とか「日本ブランド」がまだ憧れをもって受け入れられているため、多くの名だたる小売企業が好機と見て東南アジアに進出してきた。だが彼らの予想に反して、先端を行くと考える売り場を持ち込んでも現地消費者の心はつかめないでいる。

 単に現地の消費者の志向を把握できていないというだけではなく、原因はもっと根深いところにありそうだ。日本とは異なる消費環境を背景に東南アジアでは独自の発展や進化を小売りに促している。その進化競争の土俵に日系企業が乗れていない、という問題だ。だから日系企業が日本市場の先端を持ち込もうとすればするほど、現地からすれば焦点がずれたような売り場になってしまう。

「派手で楽しい」が苦手な日本の小売り

 日本の小売市場の歴史を大ざっぱに眺めると、百貨店は家電や家具、そして衣料品などの分野で「カテゴリーキラー」と呼ばれる専門店に市場を奪われてきた。彼ら競争力のある専門店は次々と百貨店を抜け出して路面に独自の店舗を出店し、百貨店の存在を脅かしていく。