小規模メーカーなのに投資できるワケ

 2010年に中国の浙江吉利控股集団(ジーリー・ホールディング)に買収され、経営の独立性と豊富なチャイナマネーによってボルボの業績は急回復した。2015年12月期の年間販売台数は過去最高。2016年12月期はその記録をさらに更新する見通しだ。

 とはいえ、年間販売台数は約50万台で、富士重工業やマツダの半分以下。環境規制や新技術への対応で自動車各社の研究開発費が増える傾向にあるなか、なぜ小規模メーカーがここまで独自色を出せるのか。

 「5年前の話をしよう。その時に全て決めたことだ」。開発部門トップのピーター・メーテンス上級副社長はこう言う。

 ジーリー傘下に入った後、ボルボは「コネクティビティー(接続性)」「PHV(プラグインハイブリッド車)」「EV(電気自動車)」「自動運転」の4つに重点分野を絞り込んだ。

自動運転も重点分野。試作車第一号が9月に完成し、これから実証実験を進める

 逆に「やらないこと」も決めた。高級車の代名詞でもある6気筒や8気筒のエンジン開発をストップし、4気筒以下だけを開発する方針を掲げた。トヨタ自動車やホンダが次世代エコカーとして位置付けるFCV(燃料電池車)を開発しないことも決めた。車種も基本的には「90シリーズ」「60シリーズ」「40シリーズ」の3つのカテゴリーだけに絞り込んでいる。

 こうした選択と集中が、小規模メーカーながらボルボが効率的な投資で我道を進むことができる理由だ。

 鍵の全廃は、「尖った取り組み」を声高に宣言することでピーアール効果を大きくするというマーケティング的な要素もあるだろう。実際は鍵とデジタルキーが併存する状態が長く続く可能性は高い。それでも、選択と集中によるぶれない戦略は、小規模メーカーの生き残り方のヒントとなるに違いない。