出展企業に話を聞いてみた。その1社であるヤマサンは自社製品10種類を机の上に並べて、代表取締役の奥山進氏自らが来場者に熱心に対応していた。奥山氏が「唐辛子好きが高じて商売を始めた」という同社は、無農薬の唐辛子にこだわり、香辛料の製法で特許を取っていて都内の高級飲食店チェーンにも卸している。

 しかし「社員は家族のみであとは地元の高齢者の方のアルバイトだけ。娘もいるが、結婚して跡を継ぐのは難しい」と現状を説明する。79歳という年齢もあり廃業も考えたが、「取引先の飲食店や自治体からもやめられたら困ると言われて。これだけ必要としてくれているなら、なんとか存続したいと。イベントでいい人が見つかれば」と参加理由を話した。

 ほかにも、米粉パンの材料として人気のある米粉を扱う「丸宮穀粉」をはじめ、老舗の貸衣裳業者、ぶどう、なしの栽培農家なども参加。それぞれのブースで経営者が「後継ぎ候補者」と話す姿は真剣そのものだった。経営者がこの場で見込みがあると判断した候補者は、後日改めて企業を実際に訪問する機会を得て、労働条件が合えばまず働いてみて、お互いの意思が確認できれば事業継承という流れになるという。

 想定以上の来場数で、一定のマッチング効果はあった今回のイベント。テレビに取り上げられた唐辛子のヤマサンでは、ウェブから大量の注文が入るというオマケまでついた。

イベントに関連したメディア露出で注文が殺到したヤマサンの香辛料

 一方で、参加した経営者からは「何十年も存続させたいから若い人に託したいが、来たのは50歳を過ぎた企業のリタイヤ組が多かった」「自社には女性向け製品が多いので、女性社長を募集したかったが男性が多かった」と、ミスマッチを指摘する声も上がっていた。

 始まったばかりのイベントで課題は多いが、長年かけて築いた事業基盤の次世代への継承は多くの経営者にとって切実な願いだ。主催者である東近江市には同じ悩みを持つ近隣の自治体から、イベントについての問い合わせが相次いだという。自治体、企業、来場者の反響から、より大きなイベントに発展する可能性も感じられた。もちろん、イベントが成長する一番の特効薬は、実際に移住者の「あとつぎさん」が生まれ、定着することに違いない。今後の取り組み、展開に注目したい。