「飲酒運転」同様、「過重労働」も許容されない時代に

 長時間労働を巡る報道を見ていると、かつて飲酒運転が社会問題化した頃を思い出す。福岡市で飲酒運転による悲惨なひき逃げ事故が起きたのは、2006年のこと。法の不備を指摘する世論の高まりもあり、2007年には道路交通法が改正され、飲酒運転とひき逃げは厳罰化された。現在は飲酒運転をした社員を、即座に懲戒解雇・懲戒免職とする企業も多い。

 過重労働が続けば、心身の健康に悪影響がある。労働基準法では上限労働時間を定めている。だが同時に、同法36条にある特別条項付き労使協定を結べば事実上青天井の労働時間が認められるため、労働時間規制は骨抜きになっているとの指摘があった。

 政府は労働基準法36条の見直しに着手しており、来年にも改正案が国会提出される公算が大きい。安倍晋三首相をはじめ労働行政の幹部からも本気で変革するとのコメントが相次いでおり、長時間労働に依存している企業はビジネスモデルそのものが成立しなくなる可能性もある。改革に要する時間を考えれば、今が働き方改革に本気で取り組むラストチャンスだろう。

 今では考えられないことだが、飲酒運転のケースでは前述の事故の前まで、世の中になんとなく許容するような雰囲気があったと記憶している。だが、もう我々がその時代に戻ることはない。

 そして、かつて飲酒運転が社会問題化したときと同じように、過重労働も厳罰化の方向へ進んでいる。2015年度に労災認定された過労死は96件、過労自殺は93件。申請と認定のハードルを考えれば、氷山の一角だ。長年指摘され続けてきた問題にも関わらず、耳目を集める悲劇がなければ社会が動かないとしたらあまりにも悲しいが、我々にできることは社会の「進化」を着実に推し進めることだけだ。