企業の側に租税回避の意図があるかどうかは関係なく、課税当局側の判断が重要になる。「米国子会社の利益が少ない場合『ノウハウ供与や経営指導がない』といった理由を付けて、輸出価格が高すぎるという判断をされることもある」(KPMG税理士法人のパートナー、角田伸広・税理士)という。

過激な政策をそのまま実行するのか
ドナルド・トランプ氏が大統領選で掲げた主な政策
出所:大和総研の資料を基に本誌作成

 米国と外国の間の直取引だけではない。第三国を経由して親会社と米国子会社の間で取り引きが行われる場合も厳しくしてくる可能性がある。「米国子会社が赤字だったりすると、『本来は、親会社が経営改善をするもの。そうすれば利益は出る』といった理由を付けて課税を主張してくる」(同)という。この場合は、親会社国と米国との間に挟まれる第三国の会社を含めた取引価格の調整は、親会社側に求めら委ねられることになるという。

米国財政、来年3月には債務残高が上限へ

 例のないことではない。トランプ氏と大統領選で戦ったヒラリー・クリントン氏の夫、ビル・クリントン氏が大統領になった1993年、クリントン氏は代替ミニマム税という「新税」を検討している。外資系企業の米国法人が赤字でも売り上げ規模や設備などに応じて課税するというものだったが、さすがに「内外差別になる」として実施はされなかった。だが、替わりに移転価格税制の提供強化に比重を移したと、当時いわれたものだ。

 実態として、米国の財政は既に極めて厳しい。「来年3月には債務残高が法定の上限に達する見込み」(大和総研シニアエコノミスト、近藤智也氏)。支払の繰り延べなど、やりくりをするのだろうから半年程度は、伸ばせるだろうが、それでも来年秋には限界が来る。

 法定の債務上限を引き上げてさらなる国債発行に踏み切るほか手はないが、そのさなかに何の手当もなく財政赤字をさらに膨張させる減税ができるだろうか。と考えれば、何らかの徴税強化はありえる。

 トランプ氏が移転価格税制について言及しているわけではないから、これも想定の域を出ない。しかし、財源は他に見当たらず、内向きの姿勢やクリントン時代の例を引けば、可能性はありそうだ。「良いトランプ」なら、無謀なことはしないはずだが…。