1959年に国民年金法案が可決。今から55年前の1961年に国民年金の制度は始まった。当時はここまで高齢化が進むとは思っていなかったのでは。(写真:毎日新聞社/アフロ)

 あまり知られていないが、11月は「ねんきん月間」。年金制度について、じっくり考えて見ようという一カ月だ。期せずして今月初旬、年金給付を抑えるルールを盛り込んだ国民年金法改正案の審議が国会で始まった。政府は年金制度を「百年安心」と掲げる一方、「どうせ将来貰えないでしょ」と諦める声も聞こえる。果たしてどうだろう。冷静に整理し直してみるのも悪くない。

「年金カット」vs「制度の持続性重視」

 国民年金制度で注目される変更点は2つ。1つ目は年金支給額の上昇を抑える「マクロ経済スライド」と呼ぶ仕組みの強化。11月1日に審議入りした国民年金法改正案に盛り込まれた内容で、物価が上昇しても賃金が下がっていれば支給水準を下げるという内容だ。

 年々厳しくなる年金財政において、将来に余力を残す狙い。これに対し野党は「年金カット法案」と批判する一方、安倍首相は「世代間の公平性が確保され、制度への信頼を得る」と理解を求めている。

 もう1つは、受給資格期間の短縮。これまでは、20歳から60歳までの間に25年間は年金保険料を納めないと国民年金(基礎年金)を受け取ることが出来なかったが、この期間が10年間に短縮される。年金機能強化法改正案に組み込まれた内容で、9月に閣議決定、来年10月から支給が開始される。制度変更により新たに約40万人が基礎年金の受給権を得る。

 将来年金を貰えず生活難に陥る人を防ぎ、セーフティーネットを拡充する内容だ。25年以上にわたり保険料を納めている人は不公平と感じるかもしれないが、将来的に生活保護費などの抑制に繋がれば、社会保障全体にはプラスに働く可能性もある。

 年金財政をコントロールして将来も持続する制度にする。将来経済的に困窮する人を減らす。政府が取り組む2つの課題は、まさに年金制度が抱える最大のテーマとなっている。

寿命65歳と81歳では3倍の違い

 言うまでもなく、年金制度が疲弊する最大の原因は少子高齢化だ。国民年金制度か開始した1961年時点では、男性の平均寿命は65歳。当時の支給開始年齢は60歳のため、年金受給期間は5年程度だった。

 現在の男性の平均寿命は約81歳。年金支給開始は65歳となったが、この差は16年と制度開始時の3倍にも伸びている。高齢化により総支給金額は膨れあがる。

 さらに少子化が追い打ちをかける。国立社会保障・人口問題研究所によると、現在は1人の高齢者を2.8人の現役世代で支えているが、2030年には1.8人、2050年には1.3人で支えることとなる。

 2007年に発覚した約5千万件の消えた年金記録問題や、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用損などで年金に対する風当たりは厳しいが、将来の受給者にとっての一番の大敵は、制度誕生当初からの人口構成の変化にあることは間違いない。