2027年に開業予定の、東海旅客鉄道(JR東海)のリニア中央新幹線。東京・品川~名古屋を最短40分で結ぶ速さから、ビジネス客の利用が期待される。だがよく見ると、観光面でも意外に力を発揮しそうだ。視点を変えてリニア新幹線の実像に迫ってみた。

リニア中央新幹線の車両。東京・品川駅と長野県(仮称)駅を45分で結ぶ(各駅停車型)

 「高速バスで4時間超、列車だと5時間はかかるな」――。7月中旬、総合スーパー大手、ユニーの店舗を取材するため長野県への出張を準備していた記者は、初めて訪れるある取材地から、東京都内への帰り道を調べ、所要時間の長さに愕然とした。

 その取材地とは県南部の飯田市。国の名勝「天龍峡」や、秘湯と秘境の里「遠山郷」があることで知られる。同市内にはリニア新幹線の「長野県(仮称)駅」ができる。品川~長野県駅の間には、神奈川県相模原市(JR橋本駅付近)、甲府市にそれぞれ駅ができるが、各駅に停車するタイプでも品川~長野駅間がわずか45分で結ばれる。

「3時間で行ける」の甘い認識

 都内から長野県北部や中部に行く場合、北陸新幹線(旧・長野新幹線)の沿線だと東京~軽井沢が1時間15分程度、東京~長野も1時間半ほどで着く。都内と飯田市の直線距離は180km程度。新幹線は走っていないが、それでも特急列車を使えば3時間程度あれば行けるだろうと考えていた。

 ところが、飯田駅発の特急「ワイドビュー伊那路」が向かうのは南の豊橋駅(愛知県豊橋市)。つまり、高速鉄道を使うにしてもまず豊橋まで南下し、それから東海道新幹線で都内に向かうルートになるのだ。長野県の南東部は南アルプスがそびえ、往来を妨げているからだ。

 しかも豊橋では、新幹線の最速「のぞみ」は止まらない。次に速い「ひかり」や各駅停車「こだま」を使うしかなく、乗り継ぎに時間もかかる。

 長野県内を通るルートでは、県中部の岡谷駅まで出れば特急「スーパーあずさ」で新宿まで行ける。ところが飯田~岡谷間は特急電車がなく、移動に2時間はかかる。どちらにしろ「列車だと5時間」になってしまうのだ。

 高速バスを使うにしても、東京・新宿駅のターミナルまで4時間はかかる。こちらも鉄道と同様、地理的要因が大きい。記者は自らの認識の甘さを痛感した。