「法律ハック」で電子契約成立

 既に法改正を待たずに賃貸契約の電子化を実現している企業がある。その1社がレオパレス21だ。2015年に賃貸契約の電子化システムを導入し、既に運用を始めている。なぜ同社は契約を電子化できたのか。それは同社の契約形態が“宅建業”に当てはまらないからだ。

レオパレス21の本社(東京・中野)

 実は賃貸契約で宅建業法が適用になるのは、契約を代理したり媒介したりする場合に限られるのだ。レオパレス21の賃貸アパートは、同社が大家から物件を一括借り上げ、それを物件の利用者に貸し出している。「サブリース」と呼ばれる提供方法だ。契約は企業と借り手が直接結ぶことになるため宅建業に相当せず、契約の電子化ができた。

 同社の深山英世社長は「電子化することで顧客の利便性が高まるだけでなく、書類管理などの社内業務も簡素化できた」と効果を語る。

 それを聞いた時、まさに「法律ハック」だなと感じた。「ライフハック」という流行語も生み出したのでご存じの方も多いと思うが、高い技術力を駆使してシステムを操ることを“ハック”という(コンピューターシステムに不正に侵入する“ハック”とは異なる)。つまり法律を入念に分析することで、規制でできないと思われていたサービスが実現できることがある。法律ハックが使い勝手のいいサービスを作る第1歩といえるだろう。

 使いやすいサービスは法律ハックをしていることがよくある。例えば個人が商品を売買できるフリマアプリ「メルカリ」は、オークション形式ではなく出品者が値付けするサービスにすることで、古物営業法が定める「古物競りあっせん業」に相当するのを回避している。古物競りあっせん業に必要な出品者の本人確認などの順守事項が必要なくなり、簡単な手順で利用者が商品を出品できるようにして利用者増につながった。

 ほかにもベンチャー企業のバンクが運営するアプリ「CASH(キャッシュ)」はサービス開始当初、撮影したモノを担保にお金が借りられる“質屋”としてサービスを設計することで、「貸金業」に相当するのを避けた。そのため、貸金業の上限を超える2カ月で15%という金利でお金を貸し出せた。なお、キャッシュは2017年11月1日現在では「中古品買い取りアプリ」として無金利になっている。

宅建業でも電子契約

 今、賃貸契約で第2の法律ハックが進んでいる。宅建業法37条には「書面を交付すること」とあるが、「書面で契約すること」とは定めていない。つまり、書面さえ発行すれば現行法のままでも契約が電子化できるのだ。

 ソフトバンクコマース&サービス(ソフトバンクC&S)が2017年8月25日に発表した「IMAoS(イマオス)」は、この解釈を利用した賃貸契約の電子化サービスだ。電子契約とは別に同じ内容の書面を送付することで、宅建業法37条を満たせると確認したという。

 同サービスの開発には東急住宅リースが協力した。東急住宅リースは関連会社などで法人向け賃貸契約にイマオスを使い、社宅など賃貸の法人契約を2017年中に1000件電子化するとしている。

 賃貸契約を電子化する企業が増えれば、追従する不動産会社が増えたり法改正を求める声が大きくなりえる。もしかすると、次の引っ越し時にはスマホをタップするだけで賃貸契約ができるかもしれない。期待を込めて見守りたい。