「アパートを立ち退いていただけないでしょうか」。

 先日不動産屋から電話があり、こんなことを言われた。断っておくと、不祥事を起こしたわけではない。最上階に住む大家が高齢のため、息子夫婦の家に引っ越すからだ。アパートは取り壊して土地を売却するという。

 日経BP社のオフィスが移転したのを機に引っ越しを考えていた矢先の連絡だった。渡りに船とばかりに立ち退きに快諾し、さっそく会社帰りに不動産屋に立ち寄って部屋を見つけ、早々に引っ越した。

ネット検索で物件の目星をつけてから不動産屋に向かった

 荷解きを終えて一段落したときにふと疑問に思った。「なぜ賃貸契約はこんなに面倒なのか」。というのも、部屋を決めてから契約をするまでに契約書を郵送してもらい、署名と押印をして送り返すといったやり取りが必要だったからだ。

法規制が阻む賃貸契約の電子化

 お世話になった不動産屋に聞くと、紙の契約書を郵送していたのは「法律で決まっているから」とのこと。詳しく聞くと、宅地建物取引業法(宅建業法)によって書面での契約が義務付けられているという。宅建業法37条には「次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない」とある。

 一般的な契約であれば、技術的に電子契約は難しくない。インターネット経由でも契約者の本人確認や契約内容が改変されていないことを保証することができるからだ。1998年には電子帳簿保存法が制定され、領収書や請求書といった証票などは電子的に生成し、電子データのまま保管することが認められている。

 賃貸サービス大手の幹部は「宅建業法が改正されれば、契約を電子化して業務が効率化できる。事業メリットは大きい」と話す。改正を求める機運が高まれば、国土交通省が規制緩和に動き出す可能性もある。

 しかし、法律の改正には時間がかかる。記者が次に引っ越す時までに改正が間に合うとは限らない。賃貸契約は本当に規制緩和を待つしかないのだろうか。