組織の中で埋もれたアイデアを事業として成立させ、起業家精神を持った社員を育てる――。パナソニックが外部企業と始めたプロジェクトの第1号が11月、始動した。チョコレートドリンクメーカーを販売する新会社「ミツバチプロダクツ」(東京・港)だ。パナソニックは、アイデアを出した社員が新会社の経営に専念するために最大5年間休職できる制度を新設。今後も同じ枠組みで「起業家精神」を持った社員を増やし、パナソニック本体を変えていくのが目的だ。だが、事業が軌道に乗った後、必ずしもパナソニックに戻る必要はないという。どんな取り組みなのか。

「昨日パナソニックを休職し、新たにミツバチプロダクツの代表に就任しました」。11月1日、記者や関係者の前でこう宣言したのは、1997年に九州松下電器(現パナソニック)に入社した浦はつみ氏だ。21年勤めたパナソニックに籍は置いたまま、自らも一部出資して設立したスタートアップ「ミツバチプロダクツ」の社長になった。
ミツバチプロダクツはチョコを水に溶かしたチョコレートドリンクを作る機械を販売する。「インフィニミックス」と名付けた機械は、蒸気を出しながら、同時に撹拌する特許申請中の機能が特徴だ。1センチメートル角程度に砕いたチョコレートを水に混ぜ、蒸気で撹拌する棒を入れてスイッチを入れると30秒ほどでチョコレートが水に溶け、表面に泡が立ったチョコレートドリンクが出来上がる。

「従来はチョコを溶かすのに10分か20分かかっていた」。浦社長に頼み込まれ、機械の設計を担当した上葉ダグラス氏はこう説明する。調理時間を大幅に短縮でき、試作機を使った欧州のチョコドリンク関係者の評判は上々。上葉氏は元米アップルのデザインエンジニアでもあり、見た目の美しさにもこだわった。棒は表面に凹凸がなく、ササっとふけて掃除が簡単だ。

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