企業の人事部門にIT(情報技術)化の波が押し寄せている。

 日経ビジネス10月31日号「人事をIT化『HRテック』」でも詳報したように、これまでも勤怠や給与管理のシステム化は進んできたが、これに加え、社員の評価や社内SNSへのアクセス頻度、従業員が入力したメールや文書作成ソフトの内容にまで踏み込んで一元管理する動きがある。こうして収集したデータをAI(人工知能)で分析することで、従業員ごとに最適な仕事や部署、キャリアパスを提案したり、メンタルヘルスの度合いを計測したりするサービスが相次ぎ登場し始めた。こうした技術は「HRテック」と呼ばれ、今後も進化拡大が見込める分野として注目が集まっている。

 大規模に人事データを収集、分析するシステムを企業が導入するには当然、お金がかかる。特にAIを活用したシステムは基本的には大企業での導入を前提にしており、導入コストが数億円に上る事例もある。資金繰りに余裕のない中小企業がHRテックを活用するハードルは現状では高い。人事など管理部門にお金をかけるくらいなら、本業のモノ作りや店舗展開などに投資したいと考える企業も多いだろう。

 一方で、中小企業こそHRテックが必要だと指摘する声もある。もともと人事のIT化は遅れており、特に中小企業では今も勤怠を紙で管理しているところも珍しくない。「従業員がどれだけ残業しているのか、効率の悪い働き方はしていないか、残業代の未払いはないかなど、システムを入れてもらえば簡単に分かることはたくさんある。だが導入はあまり進んでいない」。採用支援を手がけるネオキャリアの加藤賢・専務取締役副社長COOはこう指摘する。

 最新システムは導入したいが資金に余裕はない。その課題にネオキャリアは目をつけた。採用や勤怠などをクラウド上で一元管理し、社会保険の申請なども自動化できる「jinjer(ジンジャー)」と呼ばれるサービスを今年開発。現状では、それぞれのサービスを利用するのに1アカウント(従業員に1人当たり)200円ほどのコストがかかるが、年内を目処にこれを企業に無料で提供する形にするという。

最新の人事システムを無料化

 ではネオキャリアはどうやって最新の人事システムを無料化するのか。

ネオキャリアの人事システム「ジンジャー」の概念図
出所:ネオキャリアの資料を一部改変

 基本的な仕組みは、米グーグルなどが採用する広告モデルと同じだ。グーグルは検索サービスなどを無料提供する代わりに、利用者の趣味趣向に合わせた広告を配信している。この広告枠を企業に販売することで収益を確保する。ジンジャーでは従業員の人事情報をプライバシーに配慮した上で保険会社など他社に提供し、その見返りにサービスが成約にいたった際にマージンを請求したりして収益を確保する計画だ。