来年から再来年にかけて、台湾の2大パソコンメーカートップが相次ぎ交代する。一人はAcer(エイサー)の黄少華董事長。9月のイベントにて創業者の施振栄氏が、2017年6月をメドに交代する旨を発表した。もう一人は、20年以上にわたって同社を率いてきたASUS(エイスース)の施崇棠董事長。交代時期は「1~2年以内」で、既に引き継ぎ作業を始めていると言う。

 両社とも、自社ブランドを持ち世界で勝負している数少ない台湾企業だ。エイスースは元々エイサーが母体の企業。2社ともパソコン市場の拡大とともに販売台数を伸ばし、世界トップクラスのパソコンメーカーとなった。米ガートナーの調査によると、2015年の世界パソコン販売台数ランキングではエイスースが7.3%で4位、エイサーが7.0%で6位につけている。

 しかし、パソコン市場は成熟期に突入し、今後大きな成長は期待できない。2社のトップ交代は、それぞれの企業が新たな成長フェーズへ向かおうと模索する姿を映し出している。今回、エイサーとエイスース、それぞれのトップに取材できる機会があったので、今後の戦略について聞いてみた。すると、2社の異なる戦略が見えてきた。

「日本航空のように復活したい」

「V字回復のために、“これ”を読んでいます」
エイサーの次期董事長候補、陳俊聖CEO(最高経営責任者)は開口一番こう言って一冊の本を取り出した。表紙に写るのは京セラの稲盛和夫名誉会長。稲盛氏が執筆した「燃える闘魂」(毎日新聞社)の中国語版だ。

エイサーの陳俊聖CEO。日本では2013年に発売された京セラの稲盛和夫名誉会長の「燃える闘魂」が陳CEOの愛読書。

 エイサーが厳しい環境におかれていることは数字にはっきりと表れている。売り上げの大半を占めるパソコンの出荷台数は、2015年に前年比15.3%減(米ガートナー調べ)。2009年から手がけるスマートフォン(スマホ)も中国勢に押され市場での存在感は薄い。2015年12月期の売上高は前期比20%減の2637億台湾ドル、利益は66%減の6億台湾ドルと大きく落ち込んだ。

 陳CEOの愛読書である「燃える闘魂」には、“稲盛流”の経営哲学が書かれており、「日本航空が再建できたように、国民の心を変えることで日本再生も可能だ」との内容を記している。

 「稲盛さんの視点や考え方は、今のエイサーに非常に重要。経営のバイブルのように活用しています。特に、新しい視点からお金を稼ぐことの重要さを学びました」と語る陳CEO。脱パソコン専業メーカーを進めるために、映画館などでの使用を想定したヘッドマウントディスプレー(HMD)や、ペット用の見守りカメラ「Pawbo」などの新製品を昨年から相次ぎ市場に投入している。