新製品の値崩れをいかに防ぐか

 本社に着くと「まずは聞いてくれ」と、パタゴニアが重視する理念の説明が始まる。
 本題に迫りたい記者の気持ちをいなすように、社内をゆっくり回る。研究開発部門には多種多様な糸や生地が並び、厳しい品質検査を実施していた。市販の生地を同社でチェックすると、9割が品質基準をクリアしないほどの厳しさだという。

世界中の様々な糸や生地を検査している

 自社栽培の有機野菜を使ったランチをいただいた後に、ようやくリユース担当者が現れた。
 まずは、「Worn Wear」プロジェクトというリユースの仕組みを説明してくれる。

 フリースやダウンジャケットなどの使用済みのパタゴニア製品を店頭などで回収、修理してリユース製品として販売する。米国内に専用のリユース工場も構えている。プロジェクトの責任者であるネリー・コーエン氏は言う。「買って使って捨てるという文化を変えたい」。

 リユース品は、劣化度合いに応じて5つの価格帯で販売している。下取り価格はその半分で、商品券として提供している。自社に持ち込めない場合は、シェアリングビジネスのヤードルなど他の流通システムに持ち込むことも奨励している。

 説明がひと段落した後、単刀直入に聞いた。「商品の寿命が延びたら、新製品の販売が落ちないか」。
 コーエン氏はこう答えた。「確かに売り上げが減る心配はあるが、これは我々のチャレンジだ」。

リユースプロジェクトの責任者であるネリー・コーエン氏。本社に併設した店舗でも、衣料品のリユースを受け付けている

 話を聞いていくと、「Worn Wear」プロジェクトには同社の理念だけではない、したたかな狙いが見えてきた。

 具体的には4つに分類できる。1つは顧客との絆の強化だ。従来は販売の時だけ顧客と接点があったが、使用済み製品の回収や修理などで顧客との絆が強くなる。その絆は次の売り上げに結び付くかもしれない。

 2つ目は顧客層の拡大だ。新品は高価で買えなくても、リユース品なら手が届く顧客層はいる。同社は同じ低価格品でも他社の新品に比べて、パタゴニアのリユース品の方が環境に良いので、使い捨て製品を減らせる効果があると見込む。

 3つ目は、こうした姿勢を見せることで、高品質な製品を作り環境を大切にする企業というブランドイメージを広めることができる。

 同社のローズ・マーカリオCEO(最高経営責任者)は「個々の消費者として惑星のために私たちができる最善の行動は、モノを長持ちさせること」と述べている。同社はそのイメージに応えるべく、新製品の設計部門と修理工場が緊密に連携し、壊れにくさと直しやすさの両立というリサイクル設計を強化している。

 4つ目は、リユース市場が確立できれば、新製品の値引きを避けられる可能性がある。ある程度の下取り価格が保証されていれば、新製品を購入する際の顧客の負担は軽くなる。

 実質的な顧客の負担は、新品から下取り価格を引いた額になるからだ。顧客は下取り価格を考慮して、大事に製品を使うようになる。結果的に、製品の寿命が延びることで、顧客にとってもコストパフォーマンスの良い製品となる。