社内コミュニケーションの促進のため「社内運動会」を実施する企業が増えている。しかし、古臭いイメージが残る運動会の実施には違和感を覚える社員も多く、参加者集めは簡単ではない。そんな課題を乗り越えて24年ぶりに運動会を復活させたのが、JX金属だ。

 昭和の時代には、会社で運動会を開催することが珍しくなかったという。社員だけでなくその家族も巻き込み、秋の休日に盛大に開催する企業が多かったのだと、歳の離れた先輩から聞いた。しかし現代、自分の周囲で「会社の運動会に出る」などという話は聞いたことがない。時代に合わなくなり、ほとんど絶滅してしまったのだと思っていた。

 しかし、そんな「社内運動会」が復活しつつあるらしい。
「最近は特に、生産性向上を目的に運動会を開催したいという企業が増えている」
 そう語るのは、地域や企業の運動会をプロデュースする運動会屋(横浜市)の米司隆明代表。同社に寄せられる依頼の件数はこの5年で約4倍、年間200件以上にまで増えているという。「働き方の効率化の第一歩として、世代を超えてコミュニケーションを取りやすい社内環境を作る」というのが、運動会を実施する企業の思惑だ。

 たしかに運動会は数百人、数千人の組織でも全員が参加可能で、チームを組んで勝利を目指すという意味では事業運営に似ている面がある。一般的には年長者よりも若い人の方が活躍するため、企業での普段の序列を平らにならす働きもある。飲み会や社員旅行などに比べれば、世代間・役職間での余計な気遣いや遠慮は発生しにくいといえるかもしれない。
 また、近年は運動会屋のように企画・進行を担う会社が存在するため、一部の社員に負担が集中しにくくなっている。

 ただ、それでも漠然と「面倒だな」「自分は参加したくない」と思う人は少なくないだろう。転職サイト運営のキャリアインデックス(東京・目黒)が昨年発表した調査によれば、運動会は「会社にあったら嫌なイベント・行事」の総合ランキング1位だった。
「『人前で運動するのが恥ずかしい』『休みの日をつぶしてまで参加したくない』といった声は多い」と米司代表も語る。仮に開催することになっても、参加者集めに苦労するだろうことは想像に難くない。
 そんな課題に挑戦したのが、昨年から運動会を復活させたJX金属だ。

24年ぶりに「社内運動会」復活

 同社は93年まで、社員だけでなくその家族も含め大々的に社内運動会を開催していたが、その後会社の再編の混乱の中で休止状態となっていた。しかし昨年、「組織と社員の活性化」を掲げる大井滋社長が運動会の復活を宣言。入社後3年未満の若手社員を中心に実行委員会を組織し、企画と参加者募集に乗り出した。

 米司代表によれば、かつて社内運動会を経験してきた経営層は、運動会に積極的だ。JX金属の場合のように、社長自らが発起人となる事例も多い。
「体力に自信がないという声はあるものの、社内コミュニケーションを円滑にするための戦略的な行事ととらえ、その機会を活用しようとする」(米司代表)。

 しかし、運動会の開催予定日は秋の連休の1日目。かつては家族ぐるみでの参加を促進した社宅制度もなくなっている。案の定、人集めは難航した。運動会復活を指揮した渋谷俊生・秘書担当課長は「20代の参加率が特に伸び悩んだ」と振り返る。