「エモい」とは、「感情的に揺れ動く様」や「言葉にできない感情を表した言葉」などと説明される。簡単に言えば、直感的に「良い」と感じることだ。

 確かに、エモい経営理念を企業の意思決定の中心にした場合、社内の対立は起こりにくいかもしれない。会社には高い目標や理想を優先する人、現実的な判断を優先する人など多様な人がいるが、社会貢献といった、ある意味で具体性のない理念に沿っていれば対立のしようがないからだ。

 会社において、あらゆる判断は経営理念に基づくため、「この仕事は社会の役に立っている」という実感も得やすいし、理念に関わらないと判断できれば仕事のやり方も柔軟に変えられる。

 この仮説が正しいとすれば、流行りの働き方改革は逆効果の危険性がありそうだ。残業時間削減ばかりを優先して仕事時間の短縮をしようとすれば、社内のコミュニケーションは減って他者に貢献している実感はますます減る。

 社員旅行や運動会といった社内行事や飲み会など、業務外コミュニケーションは企業の理念を伝える場として働いていたが、ワーク・ライフ・バランスの推進によって従来より実施しづらくなっている。

まずは経営理念の浸透から

 仕事の効率を高めるには、単に業務の内容を効率化するだけでなく、社員が高いモチベーションを持って働くことも必要だ。本当の働き方改革とは、分業化によって縦割りが進んでいた体制を見直し、立場や考え方の違う人とが協調して新しい価値を生み出すことのはずだ。労働時間の短縮は、こうした協調の時間を作るための手段に過ぎないのではないだろうか。

 そもそも、エモい経営理念を掲げるのはベンチャー企業ばかりではない。大手企業でも社会貢献をめざす経営理念は多い。しかし、その理念を経営者以外でも語る企業となると、記者にはあまり覚えがない。

 生産性を高めたいと思うなら、まずは経営理念を社員に浸透させる働き方改革から進めてはどうだろうか。それができれば、ゆとり世代の社員も仕事へのやる気を出すかもしれない。