
10月22日号の日経ビジネス特集「働き方改革 やる社員 やらない社員」は、働き方改革の“妨げ”になりがちなパターンを年代や立場ごとに集めるといった内容だったが、若者に対する相反する意見が聞かれた。若手社員は「問題になりにくい」と「問題がある」という相反する意見が出てきたのだ。
「問題になりにくい」と指摘したのは、経営コンサルタントなど改革の専門家たちだ。20代を中心とした若者、いわゆるゆとり世代は「社内での影響力が小さい」ため、この世代に反対されて改革が進まなくなったり、改革を意味のない中身に書き換えられてしまったりすることは少ないという。年功序列の傾向がある日本企業では、若者が反対したところで決定内容は変わらないというわけだ。
一方で、日経リサーチの協力を得て実施したアンケート調査(23~71歳の就労経験のある男女516人が回答)では、若者に対する厳しい意見が集まった。「仕事への責任感がない」、「自己中心的で言われたことしかやらない」、「会社への忠誠心がない」といったものだ。仕事への姿勢に課題があると感じている人が少なくないようだ。
では、アンケート調査の結果のように若者が皆仕事への熱意がないかと言うと、もちろんそんなことはない。あるベンチャー経営者は「最近の若者は真面目で努力家」と評価するし、別の製造業の役員は「技術レベルが高くて驚く。分野によっては中堅社員より詳しい」と話す。
こうした評価の違いは若者の個人差によるものだろう、と記者は考えていた。“ゆとり”と呼ばれる世代にも多様な人がいるのだから、仕事熱心な人もいればそうではない人もいるはずだ。だが、リクルートワークス研究所主幹研究員の豊田義博氏は「それだけではない」と話す。ゆとり世代が「本気」になるには、条件があるというのだ。
仕事は「生きるため」な若者

豊田氏は「ゆとり世代の多くが会社にある種の失望を感じていて、仕事をライスワーク(食べるために仕方なくする仕事)と割り切っている傾向がある」と話す。割り切っているため、出世したいわけでもなく、仕事を通じてやりたいこともない。終身雇用制度が一般的な日本では解雇のリスクも低いため、仕事に熱意がわかないのも当然というわけだ。
なぜゆとり世代が会社に失望しているのか。それは、若い世代の多くが「他者への貢献」と「協力して行動する」ことを求めているのに対して、多くの大企業では分業化が進んでいて、自分が担当している仕事の会社全体に対する貢献具合が分かりにくく、社内の対立などもあって協力して働いている実感がわきにくい、というものだ。
豊田氏はゆとり世代が受けた教育の特徴として、「ディスカッションやグループワークといった、集団で協力して作業する授業が急速に増えた」と指摘。SNS(交流サイト)が普及していたこともあって、誰とでも仲良く接し、相手に貢献することを求める人が多いという。
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