テロ対策特殊装備展(SEECAT)が10月19~21日に東京ビッグサイトで開催された。リオデジャネイロ五輪が終わり、東京五輪が4年後に迫る。SEECATで見えた世界的スポーツイベントの警備を成功させるキーワードは「高スループット」。安全を確保しつつ、いかに観客のチェックを手早く済ませるかという考え方だ。

 SEECATは今年で10回目。東京ビッグサイトが主催し、東京都や内閣府、警察庁、公安調査庁などが協力・後援する。今回は約150の企業や組織がドローンの自動検知や顔認証などの映像解析、発電所などの重要施設防護に関する展示を行った。当然、4年後に迫る東京五輪を意識した企業も多い。

 まずはリオ五輪の公式警備機器サプライヤーだったイスラエルの警備コンサル会社、ISDSのブースを訪れてみた。同社はセキュリティー先進国イスラエルの企業約40社を束ね、リオ五輪の警備システムを構築した。中でも「現場で最も注目を浴びた」(担当者)というのが、警備機器ベンチャーのカイラー・インテリジェント・システムが手掛けた「カイラトロン」だ。

5人同時に荷物チェックができる機器「カイラトロン」(提供:カイラー・インテリジェント・システム)

 カイラトロンは多種のセンサーを組み合わせた、蜂の巣型の荷物チェック機器。スタジアムの入場ゲートなどに設置された。観客は入場用のIDを使って5つのロッカー部分にそれぞれ荷物を入れる。中ではエックス線による金属探知のほか、CBRNE(化学・生物・放射性物質・核・爆発物)テロに備えたチェックも行う。観客は自身の身体検査を終えた後、カイラトロンの裏側に周り、再びIDカードを使ってロッカーを開け、荷物を取り出す。

 開発者でカイラーのCEOを務めるリサ・ドレヴ氏は「大規模なスポーツイベントでは、カスタマー・エクスペリエンス(顧客経験価値)が重要。押し寄せる観客のチェックを、迅速かつスマートに行わないといけない」とカイラトロンを開発した理由について語ってくれた。

 カイラトロンの特長は短時間で多数の観客をさばける「高スループット」にある。1人当たりのチェックにかかる時間は10~20秒ほどで、5つのロッカーを同時並行で使うこともできる。

 さらに搭載したAI(人工知能)は機械学習により自己進化し、チェック時間を短縮させる。例えば梅雨の時期には折りたたみ傘をカバンの中に入れている観客が増える。最初のうち、カイラトロンは折りたたみ傘が危険なものでないか入念にチェックするが、AIが進化すると傘を「この時期にカバンの中にあって当然のものだ」と認識して警戒度を下げる。

 ドレヴ氏は「可愛いデザインも多くの観客に気に入ってもらえた。警備も含めて快適な演出ができるかが大事だということを実感した」とリオ五輪を振り返る。ISDSのレオ・グレザー会長も「日本のセキュリティーベンダーとも連携して、東京五輪での受注を目指して準備している」と意気込みを語る。

「カイラトロン」の模型を手にするカイラーのドレヴCEO(左)とISDSのグレザー会長