医者はケチと思われたくない

 日本でトップ10入りしながらも、世界では上位30品目にも入っていない薬が3つある。抗血小板薬「プラビックス」、降圧薬の「オルメテック」、経皮鎮痛消炎薬「モーラス」だ。これらは決して高額ではなく、1人の患者が1日当たり使う価格は数十~数百円程度にとどまる。にもかかわらず売上高が大きいのは、それだけたくさんの人に使われていることを意味する。

 例えばプラビックスは、日本では2006年に発売され、特許が切れて価格の安いジェネリック薬が登場したのは2015年6月だ。欧米であれば特許が切れたら速やかにジェネリック薬へ切り替えが進むのは普通だ。だが、日本では医者も患者もいまだにジェネリック薬の使用をためらう風潮がある。

 逆に、オルメテックが日本で売れているのは降圧薬の中で新しいタイプの薬剤だから。ARBと呼ばれる種類の新薬で、価格は古いタイプの降圧薬(カルシウム拮抗薬や利尿剤)に比べて高い。とはいえ、その効果が、昔ながらの安価な降圧薬より本当に優れているかどうかは議論が分かれるところだ。

 実際、米国では降圧薬の第1選択薬は利尿薬となっている。利尿薬は安価な上、臨床的な有効性も確立しており、そうした薬を第1選択とするのが世界の潮流だ。そのためオルメテックは、欧米では日本ほど普及していない。

 日本の医薬品売上高ランキングで、モーラスが上位に食い込んでいる理由もかなり“お寒い”。そもそも海外では大半の国で、湿布薬自体が公的給付の対象外となっている。だが日本人は湿布好きで、自分はおろか家族の分までも処方してもらいたいと考える人が少なくない。投与も長期間になりがちだ。