EV専用プラットフォームという意気込み

 ダイムラーが発表したEV専用ブランド「EQ」は、CASEの要としてEVが位置付けられていることを象徴していた。モーターのみで動くEVは高精度な電子制御が可能で、応答性を高めやすい。エンジンを置くスペースが不要なので、各種センサーやECU(電子制御装置)などを置く余裕も生まれる。このため、電子制御による自動運転とはもともと相性がいい。

ダイムラーが発表したEVブランド「EQ」のコンセプトカーの周りには大きな人溜まりができた

 シェアリングとの兼ね合いはどうか。相乗りタクシーのような近距離移動の場合は都市部での利用がメーンとなるため、充電設備を効率的に配置しやすい。ガソリンの給油と違って、充電は所有者の家でもできるし、シェアリングする際の乗り捨て場所でもできる。借り手がいない際に充電しておけばいい。

 ダイムラーの「本気度」は、専用プラットフォーム(車台)を作るという内容からも伺えた。EVにはバッテリーを置く空間が必要なため、ガソリン車やHV(ハイブリット車)と共通のプラットフォームでは制限が多い。

 ただし、文字通りクルマの土台となるプラットフォームの開発には莫大な投資がかかる。専用プラットフォームとなれば、後戻りはできなくなる。そこまでしてEVにこだわるのは、CASEの要としてEVを位置付けているからだろう。

日経ビジネスの取材に応じたダイムラーのトーマス・ウェバー取締役(写真:久米 秀尚)

 開発トップのトーマス・ウェバー取締役は日経ビジネスなどの取材に対し「まだ(次世代車の)主役が決まったわけではない」と打ち明ける。それでも、ツェッチェ社長のプレゼンは、これからの主役はEVであると高らかに宣言しているように見えた。

 奇しくも同日、独フォルクスワーゲンが新型EVを発表。こちらも専用プラットフォームを開発していることを明かした。その直後、ドイツ連邦議会は2030年までにEVやFCVなどの排ガスゼロのクルマ以外の新車販売を禁止する決議案を採択した。今後はこの案をドイツ政府が採用するかどうかに焦点が移るが、欧州のEVシフトは急激に進み始めている。

 クルマを一変させる「CASE」と、その要である「E」。もはやクルマは単体で語るのが難しい時代になった。EV対FCV(燃料電池車)。EV対HV(ハイブリッド車)という単なるパワートレーンの競争ではなく、その背後にあるサービスまで含めた競争に軸が移りつつある。

 競争軸が変わる時代、どれほどの自動車メーカーが2030年まで生き残っていられるか。ダイムラーはそのころ、「我々はもはやメーカーではない。モビリティ・プロバイダーになった」と宣言しているはずだ。